ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

文字の大きさ
上 下
52 / 139
第3章 史実

第13話

しおりを挟む



「破ったら、……な?」



ふっと笑ったまま、世間話でもするように、問いを紡ぐ。



「そっちはまぁ、長州か?」

「……恨みはないが、ここで斬る」

「ああそうですか、こっちの質問は無視かよ」



その答えに、瞳は鋭さを湛え、口角は楽しそうにあがり。



「まぁ、答えなんぞはじめっから求めてねぇ、よ!!!!」



その言葉と同時に、5人の黒装束たちに、斬りかかる。

勿論彼らの刃先は歳三に向かう。

けれど。
敵に隙など1㎜もみせずに、上手くかわして、ひらり、ひらりと。

着流し姿の粋な人が、舞う。

キン、と刃がぶつかる音が響く。

あがる血飛沫すら、美しく見える。

どうしてだろう、怖くない。

血を見ても、フラッシュバックすることなく。

ただ、刀を交えることを、全身全霊で、楽しんでいる風に見える歳三を見つめていたい、そう思う。

目が、放せない。
人を傷つけている、そんな状態なのに。

私は、どうかしている。
この時代に来て、狂ってしまったのかもしれない。

だって、私。

こんなにも、囚われている。
貴方の動きに、表情に、瞳に、笑顔に。

心が、訴える。
どくどくと脈打つ音が、訴える。

そう、私は。
貴方のことが、こんなにも。




「………好き」




言葉が、ぽつり、唇から零れて。
刹那。




「――――――璃桜!!!!!!!!」




貴方の悲痛の叫びに。

は、と気付けば。
鈍色の刀が、私に迫っていた。

あーあ、約束破ったらいけないのに。
そんな事を呑気に思う。

何かのアクション映画の様に、スローモーションで迫ってくる刀の後ろには、ものすごい形相で何かを叫ぶ、歳三。



あれ、如何して?
如何して貴方が、そんな顔をするの?

まるで、大切な人が、いなくなるかのような――――――

鈍色が私の肩に線を刻もうとした瞬間。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...