ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第3章 史実

第13話

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「破ったら、……な?」



ふっと笑ったまま、世間話でもするように、問いを紡ぐ。



「そっちはまぁ、長州か?」

「……恨みはないが、ここで斬る」

「ああそうですか、こっちの質問は無視かよ」



その答えに、瞳は鋭さを湛え、口角は楽しそうにあがり。



「まぁ、答えなんぞはじめっから求めてねぇ、よ!!!!」



その言葉と同時に、5人の黒装束たちに、斬りかかる。

勿論彼らの刃先は歳三に向かう。

けれど。
敵に隙など1㎜もみせずに、上手くかわして、ひらり、ひらりと。

着流し姿の粋な人が、舞う。

キン、と刃がぶつかる音が響く。

あがる血飛沫すら、美しく見える。

どうしてだろう、怖くない。

血を見ても、フラッシュバックすることなく。

ただ、刀を交えることを、全身全霊で、楽しんでいる風に見える歳三を見つめていたい、そう思う。

目が、放せない。
人を傷つけている、そんな状態なのに。

私は、どうかしている。
この時代に来て、狂ってしまったのかもしれない。

だって、私。

こんなにも、囚われている。
貴方の動きに、表情に、瞳に、笑顔に。

心が、訴える。
どくどくと脈打つ音が、訴える。

そう、私は。
貴方のことが、こんなにも。




「………好き」




言葉が、ぽつり、唇から零れて。
刹那。




「――――――璃桜!!!!!!!!」




貴方の悲痛の叫びに。

は、と気付けば。
鈍色の刀が、私に迫っていた。

あーあ、約束破ったらいけないのに。
そんな事を呑気に思う。

何かのアクション映画の様に、スローモーションで迫ってくる刀の後ろには、ものすごい形相で何かを叫ぶ、歳三。



あれ、如何して?
如何して貴方が、そんな顔をするの?

まるで、大切な人が、いなくなるかのような――――――

鈍色が私の肩に線を刻もうとした瞬間。




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