ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第3章 史実

第11話

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「ああ?あんま食わねぇの知ってるだろ」



そう言われてしまうと、脳裏に沢庵を齧る歳三が浮かんできて、頷かずにはいられなかった。



「……確かに」



思い返してみれば、近藤さんや山南さんはそうちゃんとよく甘味をぱくついているけれど、歳三はどちらかといえば沢庵をぽりぽり齧っている様子が浮かぶ。



「甘味ばっかり食べてると太るぜ」

「……余計なお世話」



甘味上等、とばかりに口に運んでいれば、何故かふっと笑い声を零して、歳三は言った。



「まぁ、おめぇは痩せてると思うけどな」

「え」

「軽いしよ」



そんな事を言われるとは思わなくて、驚いた私に。



「もうちっとこう、な」



片頬をあげてにやりと笑って、そう言った。

せっかくちょっとときめいたっていうのに。

私のきゅん、返せ。



「……………うるさい」



どうせ貧乳ですよ。
まな板ですよ。



「冗談だ、馬鹿。本気にすんな」

「…………」

「胸じゃねぇぞ、大事なのは心だぞ」

「うる、さい」



くつくつとこらえきれない笑い声を零しながら、フォローしてくる。

そのフォロー、フォローになってないし、余計みじめになるのに。

そう思って、無言で最後の一口を口に入れた。

優しい甘みが口に広がって。

ふわりと、笑顔になる。



「………ふ、は、」




その様子を見ていた歳三が、こらえきれずに笑い出す。



「おめ、単純すぎんだろ」

「何よ、美味しいもの食べて笑顔になって何がいけないのよ」

「………そういうとこだよ」

「もういいもん」



子どもですよ、どうせ。
9歳も年上の貴方にはかないませんよ。

そう思ってちくりといたんだ心に蓋をして。



「……腹いてえ」



漸く笑いが落ち着いた歳三が、ふと、目を眇める。

如何したのか私が把握できないうちに、もとの凛とした表情に戻り。

そして、お店の人に声をかける。

ちゃりん、と音がしたと思えば、お店の人は営業スマイルで。



「毎度あり!また来てなぁ」



だけど、歳三は、そんな笑顔も見ないまま。



「行くぞ」



さっと立ち上がって、左手で私が外していた刀を持ち、右手でぐいと私の腕を引いて、すたすたと歩きだす。



「え、まって」

「早くしろ」



お店をでてからも急ごうとする歳三の行動の理由が分らず、足を止めようとするも、腕は捉えられたままで。




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