ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第3章 史実

第8話

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出逢ったばかりだけれど、心配げに眉を下げている彼女は、とても優しくて、そして何より、男たちの中ですごしている私にとって、女の子の友達というのは、とても欲している存在だったから。



「歳も近いし…………って、そう言えば、璃桜さん何歳?」

「あ、私、19です」

「えええええ!!!! ごめんなさい!!!」




答えれば、驚いていきなり謝ってくる彼女。



「私、17歳なの………図々しくて、本当にごめんなさい……」



愁傷に萎れて見せるものだから。



「っ、ふ」



つい、笑い声が漏れた。
鈴が鳴るように、ころころと目まぐるしく変わる彼女が、とても可愛らしくて。

笑っている私を見て、彼女も笑い出して。



「お友達に、なってください」

「よろこんで!!」

「敬語なんてつかわなくていいからね!」



笑顔で返事をした私に、そう言った彼女は、はっと口に手を当て。



「本当は私が敬語じゃなくちゃいけないのにね!」



それがまた、ツボに入って。

ひとしきり笑った後、楽しいね、そう言いながら彼女は自己紹介を始めた。



「私は、お鈴って呼ばれているの」

「え、お鈴…?」



おかしい。

史実通りいけば、佐々木愛次郎と恋仲にあったのは、八百屋の娘のあぐりのはず。

そう、新撰組の佐々木愛次郎は、八百屋一人娘のあぐりという女の子と付き合っていたという史実がある。
その二人は、悲劇にまきまれてしまうのだけれど。

でも、お鈴という人が恋仲にあったことは史実には残っていない。

と、いうことは、歴史が変わった?
その事実に、どくどくと鼓動が早まる。

初めて、私が、歴史が変わった瞬間に立ち会っているから。



「なあに?」

「え、いや、」

「あ、もしかして、愛次郎さん、私じゃない人と……?」



深読みしすぎて不安になっているお鈴ちゃんに、首をぶんぶん振って否定した。



「そんなわけない!!!」

「なら、いいのだけれど。本当は、私、江戸っ子なのよ」

「……そう言えば、言葉が京言葉じゃないね」

「そうなの!」



そう言って、お鈴ちゃんが身を乗り出した時。



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