ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第3章 史実

第7話

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特に柔術を得意としていて、初めて見た時、すごく身のこなしが綺麗だと思ったのをおぼえている。

それに、何と言っても。
すごく、かっこいいのだ。

平成では美男5人衆と歌われているイケメンの一人というだけあって、本当に整った顔をしている。

そして。



「知ってるも何も、仲良くさせてもらってます」

「ええ! そうだったの!!」



そう、たまたま新入隊士たちの稽古をつけ始めた時期と愛次郎くんが入ってきた時期が重なっていたから、歳が近いというのもあって、よく話をする仲になった。

今では、恋愛相談を受けるほど。
じっと前にいる女の子をみつめて、納得する。

最近話してこなくなったなと思ったら、こういうことか。
上手く幸せになって、今はそれに蕩けているんだろう。

ってことは。

私のまじまじとした視線に、気付けば前に座り込んでいる可愛い女の子はきょとん、と首を傾げる。

……この人は、あぐり、さん?

でも、史実ではあぐりさんは八百屋の娘で。
此処は、甘味処だから、此処にいるわけはないのに。

そうしたら、彼女は、誰?

そう思ったのと同時に、彼女も同じことを考えていたらしい。



「てことは、もしかして、貴方、………璃桜さん?」

「え、あ、はい」

「やっぱり!!!! 愛次郎さんに貴方の話よく聞くの!!」




頷いて見せれば、鈴が鳴るように可愛い笑い声で、にこにこと愛次郎君の話を始める。



「璃桜くんがまた藤堂さんを倒しただの、璃桜くんの作るご飯がおいしいだの……自慢するように話すのよ」

「そんな……」



………無駄に、照れる。



「もう、ほんと。一時期、私、貴方に嫉妬しちゃってたくらいよ。でも、凄く強いらしいから、まさか、こんな可愛い女の子だとは思っても見なかった」

「あ、えと………実は、男のふりをしているんです」

「ええ!? そうなの……」



話せない理由があると悟ったのか、彼女は、それ以上は深く訊いてくることはせずに。



「いろいろ、大変でしょ? 何かあったら、話していいのよ」



そう親身になってくれた。

それだけで、何故だか心がふわりと温かくなる。



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