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第3章 史実
第6話
しおりを挟む「もしかして、」
「え」
「…………もしかして、貴方、女の子?」
「え、と」
彼女の爆弾発言に、心臓が爆発しそうになった。
「でしょ? 大丈夫、誰にも言わないわ」
核心をつかれて、逃げ道もなく。
「はい………」
愁傷に、頷いた。
やっぱり、と鼻高々な女の子。
理由を聞けば、当たり前でしょ、とでも言うようにさらりと答えをくれた。
「だって、声が高いし」
「くう………」
ですよねー。
最近壬生浪士組の皆には、もう男だってことが染みついてきたから、あまり意識することはなかったんだけれど。
やっぱり、素になると声が高いらしい。
しゅんと肩を落とした私の様子を見て、それだけじゃないのよ、と笑う彼女。
「……凄く、可愛いの」
「え…、いやいや」
「謙遜しないで、貴方みたいな子なら、絶対土方さんも離れられないから」
「そんなことないです」
にっこり笑った彼女に、にっこり虚偽の笑顔で否定する。
「そんなことあるって……って、ごめんなさい! お客様なのに、馴れ馴れしくて……!」
急に我に返ったように慌てだす女の子。
その様子が面白くて、凄く、可愛らしくて。
「全然、大丈夫ですよ」
ああ、この子とお友達になれたら、すごく楽しいんだろうな。
幕末に来て初めて、そんなことを思った。
というか、壬生浪士組のことを好意的な目で見てくれる人がまだあまりいないのに、この子はなぜ私に話しかけてくれたのだろう。
そんな疑問がわいてきて、つい口を割って出てきた。
「壬生浪士組の事、良く知っているんですか?」
「そう言うわけじゃ、ないんだけど……」
そこで、彼女は、一呼吸おいて。
「……実は、私の好いている人が、壬生浪士組にいるの」
衝撃の事実を口にした。
「ええ!? 誰ですか!?」
「しー!」
人差し指で唇を押さえた彼女は、少し頬を染めて、恥ずかしそうに、でも本当に嬉しそうに、私に話してくれた。
「佐々木、愛次郎、ってわかる?」
「え、佐々木さん?」
佐々木愛次郎くんは、5月頃に壬生浪士組に入隊してきた、若い男の人。
歳は確か、19歳。
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