ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第3章 史実

第3話

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「あー、…………」



襖からひょいと外を覗くものの、そうちゃんの姿は当たり前にもう見えなくて。
如何しようか、そう思っているのが顔に出た。



「どしたんだよ」



またぐだっと畳に横になっている、歳三が、首だけ上げて、私を見る。



「お金がないから、買えないなーって」



そう答えれば、暫しの沈黙の後。



「俺がおめぇの分の給金出せばいいだけだろ」



さも当たり前のように、そう言われた。

うん、当たり前か。
普通に考えればそれが一番だと思う。

けど。



「でもそれは、遣いたくない」

「はぁ? 何意地になってんだよ」

「いや、だって………私、居候だし。あまつさえ、お給料をもらうなんてとても出来ないよ」

「………まだ、そんな馬鹿なこと言ってんのか」

「………いーの」



だって、迷惑になりたくないんだもの。

少しでも役に立ちたいんだもの。

私の気もち、まだ伝わらないなぁ、そう思って俯いていれば。



「ああ……」



非常に面倒くさそうに、欠伸をしながら、歳三は、しかたねぇなと言って。



「さっさと準備しろ」

「………は?」

「……餡蜜食うんだろ」

「え、でも今、お金がない、」




そう反論しようとした私の言葉を遮って。



「だから」

………俺も行くっつってんだよ、そう眉根に皺を寄せて、起き上がった。



「え!」

「俺が払うなら関係ねぇだろ」

「でも、……」



まだ食い下がる私に、ちっと舌打ちを響かせた後。



「俺も、おめぇと外行きてぇんだよ。こんなところで腐ってるよかましだ」



……………。

え、今。空耳? 嘘? 聞き間違い?



「…………私、と?」



訊き返せば、途端、ばっと顔を背ける貴方。

そして、唸るような声で。



「……………うるせぇ。さっさと準備しろ」

「…する!!!」



嘘、みたい。

まさか一緒にお出かけができるなんて思わなかったから、急に暑さなんて吹っ飛んでしまったようで。

それに、歳三から私と出かけるなんて、言い出したのは初めてで。

歳三にとっては、大した理由じゃないのだろうけれど、柄にもなく心が、弾む。



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