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第3章 史実
第2話
しおりを挟む「くうううう~」
恨めしそうに歳三をみつつ、こっちに視線をくれるときは、心底悔しそうな顔をするもんだから。
「………しかたないなぁ」
…………そうちゃんの申し出に、頷いてしまった。
途端にぱっと顔を晴らすそうちゃん。
「え!!!! 本当!?」
子どものときから変わらない、眩しいその笑顔に、なんだかしてやられたような気がして。
「……代わりに、餡蜜食べてきていい?」
交換条件を出してしまった。
「いいよ~なんでもいいよ~もう璃桜だいすき~」
歌うようにそういって抱きついてくる。
そんなところは、相変わらず、なんだけど。
「あの……そうちゃん……」
「ん~?」
「暑い………」
そう今は夏。
ただでさえ、何もしていなくても暑いというのに。
人に抱きつかれてて、暑くないわけがない。
はい、二重否定。
ところがそうちゃんは、そんな私の反論を意にも介さず、すりすりと頬を撫でつけてくる。
「人肌の温もり、いいじゃない?」
「はい?」
そう言って至近距離から見つめてくる挑戦的な琥珀色の瞳に、知らない光を見つける。
そうちゃんは、…………双子のお兄ちゃん。
だから、そんな、訳ない。
その光は、過去に、何度か見たことのあるもので。
そう、恋の、視線。
だけど、今のは、目の錯覚でしょう?
だって、貴方が私に恋心を抱いているわけないんだから。
どきり脈うった胸を、相手に気付かれないように体を離そうとした途端、ふっと体が軽くなる。
「あったまるで………いでででで!!!!」
「………副長室での不埒な行為は、見逃せねぇな……」
驚いて状況把握に努めれば、そうちゃんが歳三にぎりぎりとヘッドロック(この時代ではなんて言うんだろう)をかけられていて。
「あ、やば、稽古の時間だ」
そう言ってするりと歳三の腕から抜け出し、にこっと笑って。
「餡蜜食べてもいいから、饅頭! お願いね!!!」
そう言い残して、走って行ってしまった。
そこで、ふと気づく。
「……お金、ない」
そう、私の給金は、近藤さんに貰うものの、歳三にすぐ預けている。
何でかって? 私みたいな居候が、給料なんてもらえないもの。
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