ただ儚く君を想う 弐

第2章 大坂出張

第25話

「………俺の、自己満足だよ」



そう、貴方はぽつりと言った。

自己、満足？



「俺は、」



そう、何か言いかけて、ぷつりと黙ってしまう。



「何……？」

「………いや」



そして、歯切れが悪いまま。



「おめぇが、頑張ってることくらい知ってるからよ。好きにやりゃあいいと思っただけだ」

「え」



絶対違うこと言おうとしてたでしょ。

そう、言い返そうと思ったけれど、頬杖をついて此方を見る目線が、何処か物憂げで。



「………」



何も、言えなくなってしまった。



「おし、さっさと寝ろ」



私が何も言えない間に、歳三は、そう言って、明かりを暗くして。

仕方なくもぞもぞと潜り込む私を見る。



「ゆっくり休めよ」



おめぇは、よくやってるよ。

歳三は、そういってポンとひとつ頭の上の手を動かし、お休み、と背を向けた。

その背が暗闇の中、揺らめくのを見つめて、思う。



歳三、嘘よ。

私は全然強くなんてない。

弱い所が沢山あって、それを隠しているだけ。

プライドで、固めているだけ。



でもね、きっと。

貴方は、それすら気づいていて。

知っているのだろう、すべて。



だって、貴方は私の………、



そこで、ふと我に返る。




「……何……？」




歳三は、私の何でもない。

そんなのは、私が一番わかっているのに。

如何して、そんな言葉が浮かんだのだろう。



ゆらり、ゆらり。

闇が、揺らめく。

ふわりと、眠りが訪れて。

思考が。

ふわりと、途切れた。

ゆらり、闇の色香を残して。