ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第2章 大坂出張

第24話

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「おめぇら、馬鹿か」



腕を引っ張って、助けてくれたのは、いつも通り、ゆるりたたずむ歳三。



「えー土方さんも飲みましょうよ~」

「そうだそうだ! こんなめでたいひにのまなくてどーする~!」

「俺はまだ仕事があんだよ。悪酔いしやがって」



さっさと潰れてろ、そう言ってそのまま腕を引っ張り、私をひょいと立たせる。



「え」

「何だよ」

「え、と」



驚いて瞬きすれば、面倒くさそうにため息を零し。



「部屋戻るぞ」

「は?」

「……疲れてんだよ。さっさと寝るぞ」

「………え、あ、うん」



私が途中で入ると神経質な歳三は目が覚めてしまう。

だから、こういうことはよくあった。

特に、宴のときは、早々に床に就く。

そんな事を思いながら、同じ着流し姿でひたひたと縁側を歩き。

ふと気づく。



「……今まだ仕事があるって、」



そう言いかければ、は、と一呼吸おいて。



「……黙れ」

「……はい……」



睨まれてしまった。

だけど、もしかして、と気付く。

毎回、私が絡まれる前に助けてくれている?

そう考えれば、つじつまが合う。

そっと横顔を見上げれば、つんと上を向いて、目を逸らしている。

その表情が、正解だと言っていて。



「………ありがと」

「……うるせぇ。俺は寝てぇんだよ」



暗くてよくわからないけれど、その頬が一刷毛朱に染まっていて。

あ、照れてる。
鬼の副長が、こんな、可愛い顔するなんて、誰が思っただろう。

その表情が、何処か可愛らしくて。

こっちまで、照れてしまう。

そのまま、にやけそうになる顔を必死で抑えて、部屋にたどり着いた。



「…………」

「…………」



着々と仕事の書類を分けている歳三と、寝る支度をしている私の間には、自然と沈黙が落ちていた。



「………ねぇ」

「あ?」



ふと、浮かんだ思いが、口をついて出た。



「…………如何して、齋藤さんにあんなこと、言ってくれたの?」

「………あの野郎」



ばらしてんじゃねぇよ、と舌打ちした後。



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