ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

文字の大きさ
上 下
37 / 139
第2章 大坂出張

第23話

しおりを挟む



「今日は祝杯じゃーーーーーーーい!!!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」



その日の夜。
無事に出張から帰って来れたことをお祝いする、宴が開かれた。



「璃桜さん、お疲れ」

「あ、ありがとうございます」



だばだばと注がれたお酒をどうにもすることができずに、湯呑みを手のひらで支える。
少しは仕事が増えたとはいえ、壬生浪士組は相変わらずの貧乏なので、いつも、湯呑みでお酒を飲んでいる。

それにしても、と眉を顰めたくなる。

この時代のお酒って、本当に美味しくない。
一度だけなめてみたことがあるけれど、本当に濃くて、喉が熱くなった。

私は甘いカクテルとかじゃないと駄目らしい。

そんな事を考えていたら、ぽん、と背を叩かれた。



「お疲れ様です!!」

「……わ、ありがとうございます」



いつも稽古をつけている隊士たちからもねぎらいの言葉をもらって、なんだかむずがゆくなる。



「いやぁ、でも、本当に璃桜さんと沖田隊長が入れ替わっていたことに気づかなかったなぁ」

「おう、同じ男同士の双子ってやつは、凄いんだな」



そんな会話が聞こえてきて、冷や汗がたらりと背を滑り落ちる。

今はまだ、皆のことを騙しとおせているものの、この先どうなるのだろうと思う。

もし、今ばれたら?

飲み会→女:男=1:不特定多数→……………。


そんな想像をして、1人体をちぢこませていたとき。



「り~お~」

「わ」



緊張していた体に、どん、と衝撃が走り、ぐらりと湯呑みが傾ぐ。



「わ! っと、」



いつもの瞬発力が出て、間一髪でキャッチして、衝撃の原因を冗談半分で睨みつけた。



「ふへへ」



にやけた顔を赤くしてゆらゆらしているのは平ちゃん。



「酔っ払いめ」

「まぁ、そう言わずに」



滝のように飲んでいるのに素面のようなそうちゃんが、正反対の平ちゃんと仲良くタッグを組んで私の横を取り囲む。



「飲んでくださいよ、璃桜さん」



意地悪な笑みを浮かべてお酒を注ごうとするそうちゃん。

こいつ、立ち悪い。



「いや」



私飲めないんだって、と拒否するも反対側から絡まれて。



「もう~にげばは~ないぜ~」



歌うように言って、私から奪い取った湯呑みめがけて酒瓶を傾ける。



「ちょ、まって、ほんと、」



無理――その言葉は、喉の奥に引っ込んだ。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

新撰組のものがたり

琉莉派
歴史・時代
近藤・土方ら試衛館一門は、もともと尊王攘夷の志を胸に京へ上った。 ところが京の政治状況に巻き込まれ、翻弄され、いつしか尊王攘夷派から敵対視される立場に追いやられる。 近藤は弱気に陥り、何度も「新撰組をやめたい」とお上に申し出るが、聞き入れてもらえない――。 町田市小野路町の小島邸に残る近藤勇が出した手紙の数々には、一般に鬼の局長として知られる近藤の姿とは真逆の、弱々しい一面が克明にあらわれている。 近藤はずっと、新撰組を解散して多摩に帰りたいと思っていたのだ。 最新の歴史研究で明らかになった新撰組の実相を、真正面から描きます。 主人公は土方歳三。 彼の恋と戦いの日々がメインとなります。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...