ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

文字の大きさ
上 下
21 / 139
第2章 大坂出張

第7話

しおりを挟む



「……相変わらず、」

「……何?」

「…………気配を消すのが上手ぇんだな、璃桜は」

「は?」



何よ、それ。私は貴方を覗き見してたっていうのに。

しかも、相変わらず、って。
私が貴方と知り合ったのは、まだ3か月前だ。

そう思ったのが顔に出てしまったらしい。

何時もの歳三らしくなく、そっと寂しそうに笑って。



「……なんでもねーよ。それよか、おめぇは何してんだよ」」



そう言った後、行き成り口調が何時もの歳三に変化したと思えば、なぜ此処にいるのかの経緯について、洗いざらいしゃべらされた。



「あ、えーと………」

「何でここにいるんだよ、明日は早ぇんだからさっさと寝ろっつっただろ」

「だって」

「んだよ」

「………歳三が厠に行くって言ったから、私も行きたくなっちゃったんだもん」



恥ずかしながらも部屋を抜け出した本当の理由を言えば、拍子抜けしたような表情で私を見つめて、ぽつり。



「……なんだよ……」



そして耐え切れないようにぶはっと噴き出した。

その中でポツリ聞こえた“俺は馬鹿か”の台詞。
くつくつと笑い続ける歳三に、何だかもやもやと湧き上がってくる心中の思い。

歳三が、私に内緒事?

そんな思いがわいてくるのが、嫌でたまらない。

そんなの、沢山あるに決まってるじゃない。

だって、私はただのいち小姓、いち隊士。

副長の歳三とは、違うもの。
担ってるものも、背負っているものも。

そう言い聞かせてみるけれど、内緒事、その言葉は頭の中からまったく離れてはくれなくて。

俺は馬鹿、ってどういうことなの。

それよりも、齋藤さんに何を話していたの。
――――――如何して、こそこそ出ていったの?

そんな思いがぐるぐると。
思考を支配する。



「……厠はいいのか」

「……行きます」



もやもやに支配されて、拗ねた口調でぷいと横を向けば、きょとんとした顔で此方を覗う歳三。



「如何した」

「……何でもない! 寝てていいよ!!」



何だか居た堪れなくて、歳三に背を向ける。
気が付けばそこから離れようと足を動かしていた。



「さっさと戻って来いよ」



そんな私の背に投げられた言葉は、何処か温かくて。
拗ねてる自分が、とても恥ずかしくなった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...