ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第1章 心と気持ち

第9話

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「ありがとう、ございます。……っ!?」



心配してくれてありがとう、その気持ちを言葉にのせれば、刹那。

ガタン、と大きな音が聞こえたと思えば。



「ふざけてんじゃねぇぞ!!!!」



大きな声と共に、縁側に向かって、襖が倒れてきた。

その上には、頬を押さえる人影がいて。



「………歳三!?」



何が起きてるの。
今の怒鳴り声は、そうちゃんの声。

ということは、歳三を殴り飛ばしたのは、……そうちゃん?



「何だ? 何してんだよ、総司……?」



何事かと思ってみんなで部屋を覗けば、怒りに満ちたそうちゃんがいて。



「くそ、……いってぇ、この餓鬼が」

「……その餓鬼との約束を違えたのは、どこの誰ですか」



二人のその言葉までも明瞭に聞こえた。

約束?
って、何の事だろう。



「…………総司、おめぇは馬鹿か」

「馬鹿? 馬鹿なのは土方さんでしょう? 今時、そこらの子どもたちでも約束位守りますよ」




如何して、そうちゃんが、歳三を責めているの?

理由としてあるのは、私のこの怪我……?

でも、それだって私の勝手な行動で、私が芹沢さんに殴られただけで。

歳三は何も関係ないのに。



「不可抗力だっつってんだろうが。俺だってな、」

「俺だって? それはこっちの台詞ですよ、土方さん」



嫌。何で、喧嘩してるの?

何で、歳三まで殴られてるの?



「おい、ちょっと落ち着けよ、総司」



そう声をかけて、ぐっとそうちゃんの体を押さえる平ちゃん。

平ちゃんに押さえつけられて、ぐっと拳を握り、冷ややかな視線を投げるそうちゃんは、そのまま硬い声で言葉を落とす。



「………土方さん」



その声に、ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、平ちゃんはそうちゃんの腕を引く。

山南さんも、その様子にそうちゃんの肩にそっと手を置いた。



「行くぞ、総司」



そう言って、歳三から引き離そうとする平ちゃんに引きずられるようにして、そうちゃんは部屋を出た。

けれど、瞳は歳三を睨みつけたままで。



「この先もこんなことがあるなら、俺は譲らない」

「……あ?」

「いつでも貴方の所に取りに行きますから」



そう睨みつけた先に言葉を投げ捨てて、そのまま山南さんと平ちゃんに連れられ、縁側を歩いて行った。



「……歳。大丈夫か」

「ああ………ったく、総司の奴……」



いってぇ、と漏らす歳三の唇は、うっすらと血がにじんでいて。

それを目に入れてしまった瞬間、なんだか、居た堪れなくなった。

この一連の出来事が、私の行動のせいのような気がして。



「なんか……ごめん、」

なさい、とぽつり謝罪の言葉を零す。




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