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第1章 心と気持ち
第1話
しおりを挟む時は文久3年6月上旬。
むしむしと湿気が立ち込める、もっとも陰鬱になりがちな季節だ。
そんななか、大の(むさくるしい)男達が一つの部屋に集まって、膝を寄せ合っている。
もちろん、私も、歳三になぜかその場所に呼び出されていた。
「今日集まってもらったのはな、」
そう、近藤さんが口火を切る。
「大坂奉行所から、壬生浪士組に、出張要請が下されたからだ」
「大坂?」
「ああ、そうだ」
なんで、大坂?
そう思った瞬間、
「京じゃないの? なんで大坂なんだろ」
「な」
そうちゃんと平ちゃんが、私の代わりに代弁してくれた。
その言葉にさっと返答をくれたのは、聡明な山南さん。
「おそらく、京は既に将軍様が上洛されて、そのお蔭で警備が厳しくなったんでしょう。だから、勤王派の志士たちは、大坂の方に拠点を移したのではないでしょうか」
「へぇぇ」
「流石山南さんですねー」
大げさに驚く二人に、若干誇らしげな顔でにこやかに笑う山南さんに、こっちまで心が温かくなった。
「で? 俺は難しいことは分んないんだがよ、一個訊いていいか?」
ああ、左之さん。
柔らかい空気が台無しよ。
そう思ったのはきっと私だけではないと信じたい。
……なんて話は置いといて。
「こないだは将軍様の警備だったけどよ、今回は何のために行くんだ?」
そう、これで壬生浪士組が大坂に出向くのは、二度目。
一度目は、ときの将軍、徳川家茂が大坂湾視察に出てくるのに、その警備が必要だとかで、警備を壬生浪士組が承った。
出来たばかりで、私はこの時代に来たばかりだったから、特に詳細は聞かされていないうちに少人数で行ってきたようだけど。
今回は、どんなことで要請されたのだろうか。
また、将軍様の下坂?
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