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第8章 局中法度
第21話
しおりを挟むその夜。
思った通り、明かりを消すや否や、すぐに眠りにつくことが出来た。
けれど。
「………璃桜」
すやすやと眠りについていたところ、私の名を呼ぶ低い声にゆるゆると覚醒した。
「ん………とし、ぞ?」
辺りがまだ薄暗い所を見ると、日が昇ったばかりらしい。
「ちょっと、いいか」
「んう……まだ眠いよー」
「……副長命令だ」
「はいはい」
傍若無人なご主人様のご命令を聞くためにもそもそと布団から這いずり出れば、こっちを見下ろしている。
その様子に、なんだか違和感を覚えながらも、背を向けて布団を畳みながら、何時ものように憎まれ口をたたく。
「随分とお早いお目覚めね、鬼副長様。で? 何すれば、いい………っ」
刹那。
後ろから筋肉質な腕が伸びてきたと思ったら、胸とおなかに回され、気付けば歳三の腕の中に閉じ込められていた。
「と、としぞ……」
「うるせぇ、だまって、俺に抱かれてろ」
「………っ」
「俺と一緒に、鬼になんだろ?」
顔がカッと熱を持つ。
心臓が、破裂しそう。
歳三にとっては、こんなの朝飯前だって、そんなのは分りきったことなのに。
そう思った瞬間。
「俺は、…………間違ってるのか?」
後ろから、歳三が言葉を零す。
「………え」
如何いう、こと?
驚いて目を見張れば、苦笑が聞こえた。
「……なんでもない。忘れてくれ」
それは、何時もの副長らしくない、どこか色濃く哀しみを帯びた声色。
「俺は、鬼の副長だ」
そうやって虚勢を張るかのように、ふっと溜息を落として。
「如何、したの」
そんな様子の歳三のことが、気にならない方が可笑しい。
「なんでも、ねぇって」
そう言いながらも、私に回る腕は、力が弱まることなんてなく。
温もりを求めるかのように。
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