ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第8章 局中法度

第19話

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「璃桜は、ずっと、俺が違う俺みたいで、怖かったんだよね。でもね?」


その言葉と共に、少しだけ隙間を空けたお互いの身体。

そのせいで、瞳が、視線が交錯する。

琥珀色の、色素の薄い虹彩。
それは、確かに私と同じ色。

けれど、顔をあげなければ、もうその色は見ることが出来ない。

そう気づいて、離れてた期間の長さが、お互いの成長が、身に染みた。

自分とは何もかも違う存在だということが、顕著に表れていくようで、視線を下に落とす。


「こら、下向かない」

「うう」


途端、顎を取られて上を向かされた。


「大丈夫だから。そんなこと、璃桜がそれを申し訳なく思ってるのも含めて、分ってたよ? 璃桜のこと、俺が分らないわけないでしょ?」


ぽんぽん、と頭を撫でながら。
貴方は、耳元で諭すようにほほ笑む。


「俺はね? 壬生浪士組の、沖田総司だよ」

「っ」

「でも、ね? それ以前に、璃桜のお兄ちゃんであって、璃桜を護りたいと思ってる、1人の男でもあるんだよ?」

「そう、ちゃん………」

「璃桜は、考えすぎなんだよ。此処に、居ればいいの」

「……っ」

「此処にいたい、そう思ったなら、」


周りの事なんて、気にしないで。

自分が思ったことを、すればいい。


「俺が、壬生浪士組の副長助勤っていう居場所があるように、」


そう、優しい貴方は言葉を落とす。

私と同じ色の髪をなびかせて。
私と同じ色の瞳を瞬いて。


「………………璃桜の居場所も、此処なんだよ」


にこり、優しく、笑って。

そうちゃんは、そう言った。

その言葉を、耳にしただけで。


「………ぅ、ふぅ……っ」


さらに、涙が零れた。

それはもう、止め処なく。



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