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第8章 局中法度
第18話
しおりを挟むそうして。
「そうちゃん!!!!」
部屋の襖をガラリ、大きな音をたてて開ければ、そうちゃんは、布団の上でごろ寝していた。
「わ!? ……璃桜かぁ、もうびっくりしたじゃない」
「そうちゃん……」
「如何したの」
よっこらせ、と起き上がり、入口に近づいてくる彼。
私に気を使ってか、目を微妙にそらして。
そんな優しいそうちゃんに、ぎゅ、と抱きついた。
「えええ? 璃桜?」
「そうちゃん………ごめん、なさい」
言葉にしようとすれば、涙が先に零れた。
まるで昔に戻ったように、そうちゃんの身体に、ぎゅうとしがみつく。
「……璃桜」
「私…………怖くて」
そうちゃんのこと、しっかり見れなくなっていたの。
あの、血濡れた夜から、ずっと。
いつも優しくほほ笑んでくれるそうちゃんが、変わってしまったような気がして。
でも、でもね。
貴方は、変わってなんていなかった。
ただ、私を護ってくれた、それだけだった。
周りの人のおかげで、漸く、気付けたの。
本当にごめんなさい。
行動だけで判断することは、駄目だって気づいたから。
だから、こうして。
少しでも、謝りたいって。
そう、思ったの。
たくさんの言葉が、堰を切るように溢れだす。
だけど。
謝りたいと思った気持ちが、大きすぎて。
何も、台詞にならなかった。
ただ、ひたすら繰り返す、“ごめんなさい”とあとからあとから零れだす涙。
ごめんなさい、なんて。
ただの自己満足。
謝って、それで悪いことをした過去から逃れたいだけ。
そう思っている自分も、確かに存在するけれど。
「ごめん、なさい……」
これしか、出てこないの。
本当に、貴方を傷つけたくなんて、なかったの。
これだけは、伝わってほしい。
そう、願って、ぎゅっとしがみついた、昔とは違う精悍な身体。
その少しだけ高い肩口に、顔を埋めた。
「………璃桜」
そっと、私の名を呼ぶ声がする。
「そうちゃん……ごめ、」
「もう、謝らなくて大丈夫」
それは、昔と同じ、そうちゃんのもので。
優しく笑いながら、しがみついた私の身体に腕を回す。
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