ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第8章 局中法度

第12話

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「近藤さん」

「おう?」

「今良いか」


襖を開ければ、そこにいたのは歳三で。


「璃桜? 何してんだ」


怪訝な表情で、首を傾げて訊かれた。


「あ、お茶を持ってきたの。今からまた持ってくるね」


歳三の問いに答えれば、にやりと口角をあげて。


「そうか、終わったら、部屋の掃除を頼む」


意地悪く、命令する。


「……それくらい自分でしてよね!!」

「あ? 俺の小姓だろ。たのんだぜ、“小姓さん”?」

「あー、はいはい、分りましたよ!!」

「ふっ」

「………失礼しましたッ!!」


そう叫んで、近藤さんの部屋を後にした。

その後、持っていく歳三のお茶だけを、とっても渋く入れてやったのは、私と歳三の秘密だ。




昼餉後。

歳三が、徐に隊士の皆を、八木邸に徴集し始めた。


「何だろ」

「ね?」


かくいう幹部隊士も呼び出され、お互いに顔を見合わせている。

この突然の収集。

局中法度の発表だろうか。

そんな事を思っていたら、ひょいと左之さんに、顔を覗きこまれた。


「璃桜? どうしたんだ? 顔色悪いぞ」

「あ、大丈夫です。ちょっと食べ過ぎちゃって」


なんて、誤魔化したけれど、そんな訳はない。

近藤さんたちへの先ほどの用事は、局中法度のことだったのかも。

そう思って、近藤さんたちに未来から来たのがばれたらどうしようと緊張しているっていうのが真実だ。

ぴん、と張りつめた歳三の表情に、私の鼓動もどくどくと加速する。

さっきの今だから、あの三人のうちの誰かが、私の口走ってしまったことを覚えていなければいいんだけど。


「今日ここに集まってもらったのは、こいつを聞いて貰いてぇからだ」


そう言って、歳三が読み上げたのは。


一、士道に背き間敷事

一、局を脱するを不許

一、勝手に金策致不可

一、勝手に訴訟取扱不可

一、私の闘争を不許

右条々相背候者切腹申付べく候也







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