140 / 161
第8章 局中法度
第3話
しおりを挟む「でも、璃桜は? 土方さんと話してたんじゃないのか?」
「ああ、下らねぇ話だよ。な、璃桜」
「うん」
「ただ、俺らの役職がいつ決まったんだって聞かれたから話してただけだ」
「そうそう」
答えながら、座布団を押入れから出して、二人の座る場所を作った。
ありがとな、そう言って腰を下ろしながら、新八さんは言う。
「答えは聞いたのか? 璃桜」
「ううん、教えてくんないの」
「教える気がねぇ訳じゃねぇよ。ただ話が逸れちまったんだよ」
そう言えば、どうだったっけなぁ、そう呟いた左之さんは。
「何かあれだよな、普通に決まってたよな」
「はい?」
普通に、ってどういうことよ。
「近藤さんはぜってぇ一番上だしよ、それを支えるなんつー面倒くさい仕事は土方さんにしかできねぇし」
「その二人だけだと、がちがちになりそうだったから、山南さんを入れて」
「そうそう」
「後は試衛館組は、腕が立つから副長助勤」
「そんな感じだったな」
いやいやいや。雑すぎでしょう。
「そもそも、人数はどうやって決まったの」
芹沢さんが局長になったのを阻止するために近藤さんをたてたんじゃないの?
「芹沢のやつだけじゃ仕事がまわんねぇからな。二人いれば十分だろうってなって、近藤さんも局長になったってわけだ」
そんな、てきとうだったの?
天下の新撰組のくせに?
「なんだよ、その面。文句がありそうな不貞腐れた顔してんなって」
心の中でつぶやいていたのが顔に出てしまっていたらしい。
「それにしても、璃桜がそんなこと気にするなんてな」
「おう、驚いたぜ。おめぇもここの人間になったっつーことだな」
にこにこと笑う左之さんと新八さん。
なんなの。
それだけ聞けば、
「私がまるで無関心だったみたいな言いかたじゃない」
「そんなこと言ってねぇよ」
よしよし、と慰めるように腕を伸ばした左之さんが、ふと何かに気付いたように伸ばしていた腕を止める。
「新八」
「何だよ、左之」
「俺ってば天才かもしれねぇ」
「は?」
「いや、やっぱり天才だわ。良いこと思いついちまった」
「なんだよ」
展開が読めない周りの人たちなんてお構いなしで、左之さんは何故か私の方を向いた。
そして。
「璃桜、新入隊士たちの稽古をつけてくんねぇか?」
突拍子もない言葉を、その場に落とす。
「はい?」
この展開、さっきもあったような。
左之さんってば、何を言っているんだろう?
未来から来た私にそんなことが出来るわけないじゃない。
と、思ったのも束の間。
左之さんの隣から思わぬ賛同の声が上がった。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる