ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第8章 局中法度

第2話

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どうやって決まったのか、それは気になる。

けど、そんな事言えないじゃない?
未来とは違うから気になるだなんて。


「けど、なんだってんだよ」

「いいじゃん訊いても」

「あ?」

「だって……私だってここの一員だもん」


誤魔化そうとするあまり、かなり子どもっぽくなってしまった。
若干染まっているだろう私の頬を流し目で見た歳三は、ふっと笑い声を落として。


「何だよ、可愛いじゃねぇか」

「………はっ!?」


可愛い!?
え?どういう事!?

見る見るうちに頬がかぁっと熱くなる。


「いや、子どもみてーだなと思ってよ」

「え?」


意外。いつもなら絶対に餓鬼餓鬼うるさいのに。

自分の羞恥心など忘れて、新しい歳三の一面に目をぱちくりさせた。


「歳三って子ども好きだったんだ?」


物珍しくてつい尋ねれば、歳三はどこか遠くを見るように目線を縁側の外にやり。


「………好きじゃねぇよ。いつもうるせぇし。ただ……」

「ただ?」

「忘れられねぇやつがいるっつーだけだ」


その台詞を唇にのせた彼の横顔が。

物悲しくて。


「っ」


それなのに、とても、美しくて。


「そっ、か」


ずるいよ。
他の人の事、思い出してそんな表情されたら。

例えそれが子どもだったとしても。

その子が、彼にそんな表情をさせることの出来る貴方が。

心底羨ましい。


…………なんて、思う資格すらないのにね。


「何で璃桜がそんなしけた面してんだよ」


寂しげに笑って、わざわざ筆をおき、私の頭に腕を伸ばす。

もう、ほら。
そういうことするから。

絶対に有りえないこの心の願いが、何時か叶う時が来るんじゃないかって。

期待、してしまうの。


「いや、………」


言葉を落とそうとした時。


「よう! 土方さん!」


開け放した襖から、左之さんの声がした。


「如何した? 左之」

「俺もいるぜ」

「新八さん!」


左之さんの後ろからひょい、と新八さんが顔を覗かせる。


「ちょっと相談があんだけどよ、今、大丈夫か?」

「ああ、特に今は急ぎの仕事はない」


文机の上に載っている書類を背で隠すようにゆるりと立ち上がる歳三。

嘘吐き。
貴方が忙しくない時なんてないのに。

本当にこの組思いで。
歳三は、この組が大好きなんだと、そう思う。



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