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第8章 局中法度
第1話
しおりを挟む「やぁぁぁぁ!!」
バシッ、バシッと竹刀同士が激しくぶつかり合う音が響く、道場。
そこで私は、何故か。
「そこ! 動きが遅いっ!!」
「はいっ!!」
稽古の指南をしていた。
事の始まりは、引っ越しが終わって落ち着いてきた日の事。
4月も中旬を迎え、緑が鮮やかになってきて。
日差しもだんだんと鋭さを増してきた。
最近になって後悔することは一つ。
日焼け止めを持ってくればよかった………。
昔で、まだまだオゾン層の破壊などは起こっていないとはいえ、紫外線は乙女の天敵である。
………なんて話は置いておいて。
そうちゃんとは相変わらず、ぎくしゃくしたままだったけれど、平ちゃんの言葉のパワーで、焦ることはなくなった。
そのお蔭か、前よりは少しずつだが距離が近づいてきたような、そんな気がしていた。
目が合えば笑いあうし、他愛無いことで話もする。
今も、逃げ回るそうちゃんを平ちゃんと共に捕まえて、一緒に稽古していた。
「疲れたぁ」
いつも通り稽古を終えて、井戸水で手ぬぐいを濡らし、部屋に帰ってごしごしと顔を拭っていた。
冷たさに、きゅっと肌が引き締った気がして。
稽古の後の心地よい疲れに、畳にごろりと倒れ込んだ。
「まったくよ、いい御身分だよなおめぇはよ」
「いいじゃん疲れたのー。歳三も来る?」
「……おい、おめぇは俺を誰だと思ってんだ? ああ?」
途端に眉根に皺を寄せる歳三。
「天下の壬生浪士組副長様ですー」
「ああそうだよ、仕事がかさんで倒れそうな副長様だ」
「はいはい、副長様はどこぞの小姓と違って寝転がる暇もないですねー」
そう言えば、黒谷に行っていないのに、どこで局長副長などの役職が決まったんだろう。
副長という言葉を聞いて、その疑問を、思い出した。
「ねぇ、歳三?」
「あ? 今俺は忙しんだよ、寝転がってる暇人な凡人小姓のおめぇとは違ってな。後にしろ後に」
罵詈雑言がきこえた気がしたが、めげずに尋ねる。
「…………いつ、副長とか決めたの?」
「……あ?」
歳三にとっては、私が尋ねた内容が思ってもみなかったものだったようで、その低い声を唇から発してくるり、後ろを向いた。
「そんなん気になんのか?」
「え、いやそこまでじゃないけど………」
未来では黒谷に行って決まったと言われているのに、それについていかなかった歳三たちだもの。
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