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第7章 居場所
第10話
しおりを挟む「………あるだろ?」
「……そうちゃんが、恐ろしいの。どうしてあんなことをして、笑っていられるの? 平然としていられるの?」
認めてしまいたくない。
けれど言葉は、ほとばしるように溢れだす。
「そんなわけ、ないだろ」
言葉を荒げ、眉根を寄せる平ちゃんは、それでも瞳は優しく、
切なそうに光を放って。
目をそらしつつ、私の頬を撫でる。
「総司も、自分が嫌いになって、自分の事を認められずにいるだけだから」
「……え?」
「ほら、璃桜だって、そうだろ?」
涙を湛えた瞳を見開く私に、ふにゃりと笑って。
「……璃桜は、土方さんのことが好きでいいんだよ。俺は……」
次の言葉を聞いた時、耐え切れなくなった涙が頬を伝った。
「………そんな、璃桜が好き、なんだから」
だから、話してみろよ。
ずっと、味方でいるから。
そう、照れたように切なく口角を上げた平ちゃんに。
「………………っ」
たえきれずに、飛びついた。
「ご、め、ごめんなさ、い……っ!」
とても優しい貴方を、傷つけることしかできなくて。
とても素敵な貴方を、好きになることができなくて。
そんな思いを、腕に込めて。
身長は同じくらいなのに、私よりもはるかに筋肉質な硬いその胴体に、ぎゅっと抱きついた。
どうして貴方は、そんなに素敵なの。
どうして貴方は、そんなに優しいの。
まるで私が、悪者。
ううん、みたいじゃなくて、ただの悪者。
だから、かな。
悪者だから、こんなに困らせてしまう。
…………神様。
どうして、この人を好きになれないのでしょうか。
どうして、こんな時にもあの人が頭に浮かぶのでしょうか。
浮かぶのは、いつも。
艶やかな黒髪。
煙管をふかした、あの香り。
そして、
私の名を呼ぶ、声。
私を見据える、漆黒。
ああ、こんなにも。
あの人が、私の心を搔き乱す。
本当に、ごめんなさい、平ちゃん。
ぐるぐると回り続けるのは、あの人だけなの。
「………璃桜…、」
名を呼ばれて顔を上げれば、申し訳なさそうに下がった眉が、目に入った。
「へい、ちゃん……ごめんなさい………っ」
貴方がそんな表情をすることないのに。
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目を伏せて、零れそうになる涙をそっと、その身体に回した腕で拭う。
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