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第7章 居場所
第7話
しおりを挟むそんな私を見て、ふっとひとつ寂しそうに笑った平ちゃんは。
「……あは、俺、きかなくてもいい事すぐ訊いちゃうからな……ごめんな?」
冗談交じりに、そっと、謝罪の言葉を口にのせる。
微妙にそらされた目が、なんだかとても寂しくて。
だからだろうか。
つい、言葉が口から溢れだした。
「………私は、私が嫌いなの」
「……璃桜?」
途端、きょとんと此方を向いた、亜麻色の瞳。
「居場所なんて、ないの」
「おい、ちょ、待てよ璃桜。そんなことねぇよ?」
真っ向から見つめてくる、平ちゃんの視線と、おどおどとそらしそうな自分の視線がぶつかって、交錯する。
その刹那、ぶわり、涙が滲んだ。
その瞳が、とても優しくて。
すごく、すごく、その視線が心地よかったから。
ただ、瞳に涙をためてぼろぼろと言葉を落とす私の肩を、暖かい手のひらが包み込む。
「璃桜は、此処にいるだろ?」
ぎゅっと力を込めて、元気づけるように回されたその手のひらが。
「俺、ほんと馬鹿だから………何があったのか全然わかんねぇけどよ、大丈夫だって。自信持てよ」
そう言って、にこりと大きく笑って寄せた笑顔が。
「………璃桜は俺の、好いた人なんだから…だから、璃桜の居場所はここなんだって!」
ずっと、ずっと、優しくて、大きかった。
そう感じた途端。
――――――――心の、たがが、外れた。
「へい、ちゃん………!」
感情が動くままに、ぎゅう、とその背にしがみ付く。
駄目だとわかっていても、その温もりにあらがうことなど出来なくて。
「璃桜?! う、わ……ちょ、」
困惑したような声を耳元に感じたけれど、相手のことなど考えられないほど心が温もりを欲していた。
しがみ付いたまま、ぎゅ、と目を瞑る。
元々回されていた小さいくせに力強い腕を、背に。
どくどくと、お互いの鼓動を、胸に感じた。
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