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第7章 居場所
第3話
しおりを挟むというわけで。
齋藤さんの発言を受けてから、はや2日。
本日は、前川邸に引っ越しなのです。
小姓ということで歳三の荷物の整理をさせられている次第。
いつもやたらと紙類の多い歳三の身の回りはごちゃごちゃで、一から私が整理をしていた。
当の本人は、仕事だとかって言って、書類を持って部屋の端に机と共に避難して、何もしない。
3時間ほど格闘して、漸く終わりが見えてきた時にそれは起こった。
「あれ?」
ついでに布団を干してしまおうと、縁側に布団を引っ張り出した時。
ぽろりと、何かが畳の上に落っこちた。
「何、これ?」
拾い上げてみれば、それは。
「………髪結い紐?」
朱色の、髪結い紐だった。
何度も使用したのだろうか、擦り切れてもう髪を結うという用途では使えないような、使い古された、髪結い紐。
それがどうしてこんなところから出てくるのだろうか。
「ねぇ、としぞ……」
これ、捨ててもいいの?
そう尋ねようと思い、髪結い紐を持ったまま振り向けば。
「おい、てめぇ、何してんだよ!!」
声と共に、ばっとひったくられたその紐。
その速度に、驚いて思考が停止する。
「おい、何でおめぇがこれ持ってるんだよ。何処にあった?!」
眉根に皺を刻み、こちらへずいと詰め寄ってくる歳三。
「何で、って…………」
布団干そうと思ったら、隙間から出てきただけ。
そう、言えばよいのにどうしてか口が動いてくれない。
固まって歳三を見上げていれば、力が抜けたようにふーっと一つため息をついて。
「………思い出した、わけじゃねぇんだな…」
ぽつり、寂しそうに言葉を落とした。
どういう、こと?
何か、私と関係があるものなのだろうか。
そう、尋ねようと口を開く。
けれど。
「…………それ、何?」
代わりに出てきた言葉は、まるで関係の無い事で。
如何してそう言ってしまったのかなんて、考えたくもなかった。
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