ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第7章 居場所

第1話

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「おい、てめぇ、何してんだよ!」


その言葉と共にひったくられたのは、朱色の髪結い紐。


「何って………!」


歳三が、普段からいるものといらないものを分けておかないからいけないんでしょ?!
そう叫びたくなる気持ちをどうにか押さえて、口を噤んだ。



――――――――――


時は旧暦4月頭。


周りの木々は若葉を揺らし、通り抜ける風は清々しさを日々増してくる。

タイムスリップしてからおよそ一か月弱、私は幕末での暮らしに漸う慣れて、もうこの時代の人と同じように生活できるようになっていた。

壬生浪士組自体も、日々の隊士募集活動が功を成したのか、36名あまりの団体へと成長していた。

ご飯の量が格段に多くなり、もうひとりふたりでは台所を回せないような毎日。
歳三の仕事(雑用)と、隊士と同じ稽古、そして食事の支度。

てんてこ舞いの充実した生活に、徐々に慣れ始めていた。


そんな、ある日の事。

いつものように広間でご飯を食べていると、近藤さんが呟くように言った。


「ここも手狭になってきたなぁ」


その声を皮切りにして、平ちゃんや左之さんがぎゃいぎゃいと騒ぎ出す。


「相部屋になったらせめーの何の」

「ほんとだよな!」


平ちゃんの言葉にうんうんと頷く左之さん。
そう、部屋が圧倒的に足りないため、局長副長以外のほとんど皆が相部屋になっていた。


「平助はいいじゃねぇか、チビだし。総司みたいに細いやつと一緒だし」

「ああ?! なんだとぅ?!」


いきり立つ平ちゃんに、隣に座ってた新八さんがはぁ、と溜息をついた。


「本当だぜ。左之のやつなんかと一緒の部屋になってみろよ。毎日腹蹴られて夜中に目が覚めんぞ」

「いいじゃない、襲撃の訓練になるよ」

「いや、安眠をとるね、俺は」


ふわーっと変な声を上げて畳に寝転がる新八さん。


「どうにかして、もっと部屋を広く使えねぇかなぁ」

「だいたい、左之、おめぇは無駄なもんがおおすぎんだよ」

「なんだと! 俺の宝もんを馬鹿にする気か、新八さんよぅ!」

「あ? 箪笥あけようってもんなら、春画本がばらばらとはみ出てくるじゃねぇか。どうにかしろよ、あの量」


わしわしと白米を噛み締めながら言った新八さんに、そうちゃんが口を挟む。


「わぁ、新八さん! 璃桜の前でそんなこと言わないでくださいよー。璃桜が変な子に育ったらどうしてくれるんですかー」


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