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第6章 泡沫
第27話
しおりを挟むだって、言えないじゃない。
未来から私が来なければ、そうちゃんが、人斬にならなかったかもしれないなんて。
それに気づいているのは、未来を知ってる私だけ。
また、そこに。
彼らとの酷く大きな壁を感じて。
…………歳三との酷く遠い距離を感じて。
気付いてしまった赤心が、軋むような痛みを持つ。
だから、だろうか。
ぽつり、言葉が口から零れた。
「………私、何でここに来たの?」
「………は…?」
突然に、口から零れた問いは、歳三を混乱させてしまったようで。
困惑気味の漆黒の瞳が霞んだ視界に入ってきたけれど、堰を切ったように言葉が溢れだす。
「だって、そうじゃない。邪魔者にしか、成ってない」
「ちょ、まてよ。誰もそんなこと言ってねぇだろ」
「言ってないよ? けどね」
私が、そう思うの。
殿内さんのことも、男だって誤魔化して生活していることも。
例え剣術が強くたって、実践ですくんでしまったことも。
この時代に来て、私が役に立てることなんて、何もなかったんだと感じてしまった。
そう、本当に。
「………私が、壬生浪士組に来てやってきたことはね、ただの、自己満足だったの」
自分を。
己を。
ただ満足させるだけの、欺瞞に満ち溢れた行動だったんだと。
「だから、ね。ここにいる意味なんて、無いんだって。居場所なんて、無いん、」
「馬鹿野郎」
「………へ?」
たらたらと、思ったままを垂れ流していれば、突然言葉を遮られた。
刹那、感じる、熱いくらいの熱に、煙草の香り。
そう、この瞬きするような時間に、歳三の腕の中へと閉じ込められていた。
「おめぇは、阿呆なんじゃねぇの。そんなことよく言えるな、ああ?」
抱きしめられたまま、言葉が上から降ってくる。
口調は雑だけれど、その声色が、何処か暖かい。
「おめぇは、此処の人間なんだよ」
「……っ」
言葉を発するたび、強く腕に力を込める歳三に、期待してしまいそうになる。
「何処にも、いかせねぇ。俺の、大事な小姓だ」
その言葉に、ぎゅっと胸が軋む。
ああ、やっぱり。
大事な、小姓、止まりでしょう?
何を、期待しているの。
自分の頬を、叩きたくなった。
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