ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第6章 泡沫

第21話

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「璃桜、平気か?」

「…………っ、う」


部屋に連れてきてもらってからも、ぼろぼろと涙は止まらない。
残像が、ぐらりと歪んで瞼の裏にちらつく。


「……平気じゃ、ないな」


泣き続ける私を見て、歳三はふう、と一つため息をつき、敷きっぱなしになった布団にゆっくりと私を座らせる。

酷く、寒い。
自分が、冷え切ってなくなってしまうような気がして。

そのままふわりと後ろから回った腕に、無性に縋り付きたくなった。


「……ご、め………」

「何でおめぇが謝んだよ。何も悪くねぇだろが」


ううん、違う。
私が、眠れないからって、不貞腐れて外に行かなければこんなことにはならなかった。

こんな、大変なことにはならなかったのに。


「………ほんと、ごめ、ん……」


歳三たちには、計画があったんだと思う。

それを台無しにしたばかりか、こんな醜態まで晒して。

本当に、私は何をしてるんだろうか。


「……璃桜」


止まらない涙を零し続ける私の名を、耳元で歳三は呼ぶ。


「……な、に……っわ」


振り向こうとすれば、ぐい、とその暖かな手で、雫を拭われて。


「おめぇは、何も悪くねぇよ。だから、心配すんな」


優しく、その艶やかな声で私を諭す。


「う、うん………」


例え、それが私を泣き止ませるための偽りだったとしても。

…………今は、その言葉を、信じていいですか。
きっと、この寒さから、救ってくれる言葉だから。

そう思った途端、ぐらりと視界が回る。


「……おい、璃桜? どうした?」


突然もたれかかった私を不審に思ったのか、歳三が顔を覗きこんだ気配がした。

けれど、私はもうすでに、半分意識が闇にのまれていて。

そのあとは、ただただ漆黒の世界が私を迎えた。



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