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第6章 泡沫
第12話
しおりを挟むどのくらい、経ったのだろうか。
数分かも知れないし、何時間も経ったのかもしれない。
与えられる振動で、ゆるりと覚醒した。
「ん………」
「………璃桜?」
「……と、しぞ?」
「…………わりぃ、起こしちまったか」
そう言えば、私、そのまま布団も敷かずに、寝てたんだ。
寝ぼけた眼で、下を見れば、布団がきれいに二つ敷いてあって。
「……あれ……?」
下?
私、畳に直接寝てたはずなのに……。
そう、気が付けば。
「……ちょ、としぞ…!」
歳三に、抱え上げられていることなんて、一瞬で理解して。
ひざ裏と、背に大きな手のひらの熱を感じる。
それだけで、急速に覚醒した。
「お、降ろして……」
「あ? おめぇが部屋のど真ん中でぐうすか寝てやがったから、どかして布団敷いただけだろ。今布団に降ろしてやっから、そのままになってろよ」
「……や、待って」
恥ずかしすぎる。
羞恥から、目を開いていることが出来なくて、ぎゅっと瞼を閉じた。
ああ、もうやばい。
自分の顔が、赤を通り越して、青とかになっている気がする。
どうやって降ろされてもいいから、早く下に降ろしてほしい。
そう願った途端。
ふわりと背に、温もりを感じて。
「………ほらよ」
「わ、……あり、がと…………」
ゆっくりと布団に降ろされた。
いつも通りどさっと落とされると思っていたから。
そっと、布団の柔らかさを感じて、驚いて目を薄く開く。
その、視界の先には。
「………っ」
穏やかに此方を見下ろして、笑う歳三がいた。
行燈の淡い光に照らされたその人は、いつにもまして、何処か妖艶で。
どくり、どくり、と己の心臓が脈を打つ音ですら、比例関係にあるように大きく鳴る。
「何だよ、その顔。何時もみたいに落とされた方がいいってのか」
「え、いや……」
なんて言えばいいか分らなくて、曖昧にほほ笑んで見せれば。
「俺は、女には夜になりゃあ優しんだよ、馬鹿」
そう、笑いながら言葉を落とす。
その言葉は、彼の経験を、語ったのと同じようなもので。
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