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第6章 泡沫
第3話
しおりを挟む「よし、じゃあ、勇坊、教えて? どうして璃桜が女だと思うの?」
「それはね、璃桜ちゃんが、いいにおいだから」
何が始まるのかと思ったら。
「うーん、確かに。他の人よりはいい匂いかも。他には?」
「抱きついたとき、やわらかい」
「あ、それ、おれもおもったんよ」
ごにょごにょと小声で続けられる問答のような何かに、思わず声を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「何? 今は推測の時間だよ」
そうちゃんにさも当たり前かのように言われて、クエスチョンマークが頭を回った。
「………何それ」
「えー、推測して、遊ぶの。例えば、壬生寺で遊んでる時に、参拝に来たあのおじさんはげてるな、とか」
「そうなんよ。で、何ではげてるん思ったのかを答えてくんよ。はげてることを相手に納得させたら勝ちの遊びや。そう兄ちゃんが、俺とあそぼうゆうたら始まるんよ」
そうちゃんの言葉を為三郎が引き取って、得意げに説明してくれた。
「そうなんだ」
曖昧には頷いたが、頭の中は疑問でいっぱいになる。
そもそも、どうしてこんな遊びを始めたのかが知りたい。
けれど、今はそれを聞くことよりも、私がなぜ女だとばれたのかが知りたいから、とりあえず相槌を打つに徹する。
「で、話は戻るけど、他にはあるの?」
「んー、そんなもんかなぁ」
「おれあるよ! 声が高い!」
「えー、俺とあんまり変わらないじゃない」
くつりと笑うそうちゃんに、不満げに唇を尖らせる勇之介。
「そう兄ちゃんのいじわる。そうおもったの!」
「そうかそうか」
にこにこと笑みを絶やさず勇坊の頭をがしがしと撫でるそうちゃんが、私にじっと視線を注いだ。
そして、口を開く。
「じゃあ、答ね」
「えっ」
私が女だということをばらしてしまうのだろうか。
成り行きが読めず、じっと黙っていれば。
「大丈夫。二人なら、話しても平気だ」
私の気持ちを読み取ったように、そう、ふっと笑ったそうちゃんは、己の口に手を当てて。
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