ただ儚く君を想う 壱

第5章 存在意義

第28話

「おめぇは、隊士兼小姓だ」


………は？


「え、それって」

「言葉通りだ。大半のやつがこう紙に書いてきた」

「隊士の仕事しながら、小姓もやれってことですか？」


もう少し詳細な情報が欲しいと思って、歳三以外の人に問いかけた。


「そう言うことになるんだろうな」

「いやぁ、私たちもそんな結果になるとは思ってなかったからね。まあ、これで土方君の仕事も少しは減るだろうし、いい決定だと思うよ」

「そうだな」


にかっと大きな笑みを見せる近藤さんと、優しくほほ笑む山南さん。

なんだかあっけなく決まった私の処遇。
それでも、その決定は、私がこの時代に居ても良い理由の一つになって。


「……隊士兼小姓、頑張ります」


気が付けば、近藤さんと山南さんと同じように、微笑みが零れていた。

自分がどうふるまえばよいのかが決まり、ほっとしたのも束の間。


「……新見。沖田を呼んで来い」

「沖田、ですか」

「そうだ。それが終わったら、お主は平山と共に金策に行ってまいれ」

「わかりました」


新見さんにきびきびと指示だしをする芹沢さんの言葉に、目を見開く。


「如何して、総司を？」

「ああ。一つ頼みたいことがあるからな」


他の人も、疑問を覚えているようで、しきりに首をひねっていた。

歳三だけは、疑問を覚えながらも、その双眸でじっと、睨みつけるように芹沢さんを見つめていた。
新見さんが出ていってから何分くらい経過しただろうか。


「失礼します」


からりと襖があき、そうちゃんが入ってきた。


「何の、御用ですか……っていうか、璃桜の処遇は決まったんですか」

「ああ。こいつは隊士兼小姓だ」

「……隊士、兼？小姓？」

「そうだ」

「兼任？………ふ、はっ」


堪えきれない、と言うように、吹きだすそうちゃん。


「何笑ってんの」

「だ、だって……ぷくく。璃桜兼任するの？面白過ぎでしょ」

「人のことだと思って」

「ごめんて」


謝りながらもくつくつと笑い続けるそうちゃんに、じろりと目線を送る。


「笑いすぎ」

「だってそんなになると思わなかったんだもん。でも、大丈夫。璃桜と俺は絶対同じ組に配属されるからね」

「……組？」

「あ、土方さん、璃桜に話してないんですか？隊士が集まってきたら、組を編成するつもりだってこと」


そうちゃんの言葉に、ああそうかと納得した。
壬生浪士組の間は、まだ１番隊などしっかりした配属は無かったはずだから。