ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第5章 存在意義

第26話

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「芹沢局長。局長は、どう思いますか」

「………我は、構わぬ。璃桜が思った通りに行動すればよい」

「え」


芹沢さんが、そんなことを言うとは思ってもみなかったから、はっと視線を上げつい彼を見てしまった。

刹那、視線が、囚われて。


「璃桜。お主、やはり昨日の朝は嘘をついていたということではないか」


言葉と共に、にやりと笑われる。


「え………嘘じゃ、無いです」


本当に、歳三の決定なら構わないと思ったんだもの。
今は、いろいろ考えた結論が違ったものになっただけ。


「………今は、隊士になりたいと思ってます」

「よし。ならば、お主は隊士にしよう」

「…………芹沢局長。ここは皆で決めるべきだと思うんですが」


じっと鋭い双眸で芹沢さんを見据える歳三に、ゆらり、芹沢さんの瞳が揺らぐ。


「…………構わぬ。ならば、皆で決めればよい。我は、璃桜は隊士になるべきだと思うがな」


そう言って、ふっと鼻で笑う。
私の欲しい言葉をくれたのに、どうしてか、嫌な予感が胸を占める。

再びの沈黙。


「……じゃあ、多数決にしようぜ」


左之さんの言葉に、山南さんが懐から紙を出して、皆に配った。


「昼餉までに、紙に書いて土方君の部屋へ持っていくということで宜しいですか」

「……なんで俺の部屋なんだよ」

「璃桜くんの部屋は、貴方の部屋だからです」

「……」


ふーっと面倒くさそうな溜息が耳に届く。
思わず、ごめんなさいと謝ってしまいたい思いに駆られた。


「……わかった。じゃあ、書き終わった者は、俺の部屋にもってこい」

「それじゃあ、解散」


近藤さんの言葉に、皆は元の場所に戻って、朝餉を再開した。

私も、そうちゃんの隣に座って食事をしたのは確か。
けれど、何を食べたのかは覚えていなかった。

それほどまでに、芹沢さんが見せた何処か恐ろしい笑みに、漠然とした違和感と嫌な予感を感じていたから。



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