ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第5章 存在意義

第23話

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「……でも」

「何だよ」

「……でもね、私も、役に立ちたいの。少しでも、歳三や、他の人たちの役に立てるなら」―――――――絶対に、


後悔なんて、しないから。


「………そうかよ」


顔を下げたままきゅっと唇を噛む私の言葉に、面倒くさそうに大きな溜息をつき。


「……広間に、行くぞ」


そう言って、私の頭に手をのせた。


「……え?」

「隊士になりてんだろ。流石に、昨日あれだけ断言しといて、行き成り隊士ってわけにはいかねぇよ。それは、俺だけの一存じゃあ決められねぇからな。多数決だ」


その言葉と、頭にのる優しい温もりに、驚いて目を瞬く。
からりと開かれた襖からさす光が、歳三と私を、明るく照らす。


「……え、いいの……?」

「そこまで言われたら、俺はもう止められねぇよ。………心の底から止めてぇと思ってはいるけどな」


付け加えられた一言に、如何してだか胸がきゅうっと締まる感じがした。


「………ありがと」


漸く。
認めて、くれた?

そう思えば、ゆるゆると浮かんでくる笑みを止められない。


「おい、行くぞにやにや不細工」

「………ひど」


毒づかれて、歳三の後を小走りで追いかける。
根拠も何もないけれど。
颯爽と歩くその後ろ姿を、何故か、何処かで見たことがあると、そう思った。


「おい、集合だ」


広間に入って一言。
歳三がこう声を掛けただけで、すぐに人が集まった。


「歳、何事だ?」

「ちょっと、話があるんだ」


周りを見渡せば、試衛館派は勿論、水戸派の人たちも、集まっていた。


「璃桜の事なんだが………」


そう言うと、言葉を切り、何か言いよどんでいるように口の中でつぶやいて。


「……隊士に、なりてぇんだとよ」


そう、言った。


「え? 璃桜、あきらめたんじゃないの?」

「璃桜………」


騒然とする周囲の人の中で、ただ二人だけが何も言わなかった。

1人は、言わずもがな。
齋藤さんだ。

その何を考えているのか分らない瞳で、じっと私のことを眺めていた。

もう一人は、芹沢さんだった。
にやりと、何かを思いついたように笑みを浮かべて此方を見ていて。

その瞳は、勿論。
………濁り、淀んでいた。


「……てぇわけで。璃桜、こいつらに説明してみろ」


歳三の面倒そうな声に、はっと我に返り、口を開く。

開いたはいいものの、言いたいことが沢山あって、ぜんぜんまとまらなくて。


「………え、えと」


言葉が、出てこない。



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