ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第5章 存在意義

第22話

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「あ? 何言ってんだよ」

「だから、隊士にしてって、お願いしてるの」

「んな、駄目に決まってんだろ」


翌朝。
さんさんと太陽の光が差し込む部屋で、布団も畳まず朝っぱらから声を荒げていた。

何故なら。


「歳三の、分からず屋!」

「ああ? んだと?! おめぇは自分のこと分ってねぇんだよ馬鹿野郎!」


昨日の私の決意を、いくら説明しても歳三に理解してもらえない状態が、もう一刻近く続いていたから。
ただの突発的な思いではないということを分ってもらうため、どういう経緯でそう思ったのかも話した。

それなのに。
貴方は、その秀麗な眉を顰めてため息をつく。


「私だって、沢山悩んだ。その上で決めたの」

「……どういうことか、分ってんのかよ」

「……分ってるよ」

「後悔は、しねぇのか」


その言葉と、まっすぐ私を見据える瞳に、はっと息をのむ。
ごくりとなった喉に、自分が情けなくなった。

しっかりして、私。
歳三の瞳に何動揺してるの。

私だって、自分なりに、しっかり考えたつもりだ。
例えそれが、自分に害をなす結果になったとしても、私は、後悔なんてしないのに。

如何して、分ってくれないの。


「……しないよ」

「……だったら、もし、おめぇが隊士になったとして」


ぐっと俯いた私の頭に、ぼそり、と声が落ちる。


「……俺の、気持ちはどうなる?」

「……っ」


はっと俯いたまま、目を見開く。

歳三の、気持ち?

それを言われてしまうと、嬉しさとも、切なさとも、不甲斐無さとも言えない感情が心を占める。

歳三が、そう簡単には諦めてくれない理由も、昨日からの会話で少しだけ理解できるようになった。
けれど、私だって、諦めるわけにはいかないから。

「……それは、ごめん」


顔が、あげられない。
こうやって、私がお願いしていること自体。

私のことを考えてくれた歳三の行為を無下にする行為だって、分っている。


「何で、謝んだよ」

「……それは……」


歳三が、私を思ってしてくれたことを、無駄にしているから。

隊士になりたいだなんて、自分の自己満足かもしれない。
隊士になったとしても、役には立てることなんて少ないかもしれない。



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