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第5章 存在意義
第11話
しおりを挟む「ふぅ………」
漸く、夕餉の形が見えてきた。
「あとは、これを刻めば終わりだよ。ご苦労様」
「よっしゃー、疲れたー」
ふーっと大きな息と共に声を上げた疲労困憊の平ちゃんを見て、あとは私がやるか、そう思った。
「平ちゃん、源さん、あとは私でも出来るので、いいですよ」
「本当かい、璃桜さん」
「え、いいの?」
驚く二人に、ニコリ笑って言う。
「むしろ、楽しいですから」
純粋に、それもあるけれど。
居場所を与えてくれたからには、早く仕事が沢山出来るようになりたい、そう思ったから。
「璃桜さんがそう言ってくれているんだ、私たちは皆を広間に集めよう」
「おーし、待ってるぞ、璃桜」
そう言ってでていく二人を見送って、包丁を手に取る。
あとは、漬物を刻むだけ。
そう思って、タンっとまな板に下した時。
「いっ…………!」
やってしまった。
調子に乗って、注意力散漫になっていたのが原因だろう。
案の定、わりと深めに指を切った。
じわりと滲む、赤い血に、脳みそが停止する。
え、ティッシュ。
絆創膏は?
……………ないないないない、そんなのこの時代にない。
え、どうしよ。
消毒液とかも、ないのかな。
そんな間にも、真っ赤な血はたらたらと傷口を乗り越えて流れ出す。
それに伴って、ずきずきと痛みが走る。
思考停止状態の私に、突然後ろから声がかかった。
「……璃桜」
その声に、一瞬だけ、傷の痛みを忘れた。
だって、その声の主は。
振り向かなくてもわかる、低く艶やかな声で。
「おめぇ、いねぇと思ったらこんなとこで油売ってたのか。ったく、俺の小姓だったんじゃねぇのかよ」
……………それは、歳三の声だったから。
「夕餉の準備してただけなんだけど」
ひどい言い草に、むっとして、振り返る。
こっちはあんなに気まずくて、いろいろ考えたっていうのに、何でそんな普通なの。
「………あー、喉乾いた。おい、とりあえず茶……………ってお前!!」
振り返ったことで、私が怪我をしていることに気が付いたらしい。
ただ傷を押さえて立ち尽くしていたのを見て取ったのか、焦ったように声を上げた。
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