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第5章 存在意義
第10話
しおりを挟むそして、そのあと。
意外と、源さんは、人を調子に乗らせて使うことがうまいことが判明した。
勿論私は、身を持ってそれを実感した。
源さんってば、私が少し物を刻んだり、煮たりするだけでもかなり大げさに褒めてくれるんだもの。
そりゃ、いい気になるじゃない。
昼餉の後に、そうちゃんと平ちゃんに稽古場に連れて行かれて、ゆるい遊びのような手合せをしたり。
山南さんに連れられて、八木さん一家に、挨拶に行ったり。
息子たちの秀二郎、為三郎、勇之介に捕まって、初対面なのに少しだけ一緒に遊んだり。
新八さんと、左之さんに、お酒の話をされたり。
不思議と、歳三と水戸派の人には会わなかったけれど。
そんなこんなで、あっという間に一日が過ぎて、気が付けば、夕方になっていた。
夕餉の準備を手伝おうと、台所へ向かう途中。
「璃桜~!! 俺もやる!!」
「へ、平ちゃん? うわ」
がばりと抱きつかれ(もはや、タックルを受け)て、受け止めきれずによろけた。
「璃桜が手伝うなら、俺も手伝う!」
「え、ありがとう」
どうやら、夕餉の手伝いを一緒にやってくれるらしい。
「平ちゃん、忙しくないの?」
「おう、俺は暇なんだ、今日は非番だからな」
「そうなんだ」
そのまま足をそろえて台所へ向かえば、すでに支度をはじめていた源さんがにこりと笑って迎えてくれた。
「平助も来てくれるなんて、どういう風の吹き回しだい? いつもは頼んだってしぶしぶ、って感じじゃないか」
「え、そうなの?」
「いやぁ、まぁ、ね」
そう言われて、気付かないほど私は鈍くはない。
照れたように頭を掻く平ちゃんを見て、そう言えば、告白されたんだったと思い出す。
一気に、頬にかぁっと血が上った気がした。
「あれー、璃桜、真っ赤だけど、どうかしたの」
「うるさいよ」
誰のせいだと思ってるの。
恐らく朱に染まっているだろう顔で、ぷいとそっぽを向いた。
源さんの含み笑いに気が付かなかったふりをして、何をすればいいか尋ねた。
途端に、仕事モードに切り替わる。
源さんの的確な指示に従って、あたふたと平ちゃんと共に台所を駆け回る事、一時間ほど。
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