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第5章 存在意義
第6話
しおりを挟む「大丈夫だよ、歳三の決定だから、このまま小姓になるって決めたし」
むしろ、決定よりもその後の彼の言動に、何故かひっかかっているんだけれど。
そんな事は、流石に言えない。
というか…………言いたくない。
言ってしまったら、その気持ちに嘘がつけなくなって、後戻りできないような気がするから。
「そうそう! 総司のやつがそう言いだしたら、平助も璃桜大丈夫かな、なんて言い出しやがってよ、今に至るってわけだ」
「そうなんだ……」
私のことを心配して、此処までこそこそとやってきてくれたそうちゃんと平ちゃん。
左之さんだって、口では二人のせいにしているけれど、きっと心配してくれたに違いない。
何だか、嬉しい。
心がほっと温まるような、そんな優しい思いが満ちてゆく。
そう思ったら、自分でも自然と口から言葉が出ていた。
「あの」
声をかければ、三人の瞳が此方を向く。
「わざわざ、あ、ありがとう………」
そうちゃんは別としても、あって間もない私なんかのことを気にかけてくれる人がいる。
それだけで、存在を認められたような。
此処に、この場所に、―――この時代に、居てもいいと感じる。
そう気が付けば、思い悩んでいた自分がとてもちっぽけに思えて。
気持ちはやっぱり晴れなかったけれど、ほんわかとした想いが胸を温めてくれた。
「本当に、ありがと………」
純粋に、お礼が言いたい。
そう思って口にだした言葉を皮切りに。
「何、璃桜。改まり過ぎでしょ」
「俺たちは何にもしてないしな。ただ、璃桜を見に来ただけ」
「あ、平助、それが本音だな」
「璃桜を見に来た? ちょっと平助、何馬鹿な事言ってるの」
「左之さん! 何言ってんだよ、総司にばれたじゃんか!」
「俺はしーらね、お前が自分で言ったんだろ」
「へー? 心配したって言ったのはどこの誰だったっけ?」
「いやぁ、勿論心配で、だよ! おおおい、総司、顔がこえぇよ」
何故だか、言い合いが始まる。
それによって再び喧騒に包まれた縁側。
それでも、その喧騒はさっきまでと違って面倒くさいだなんて感じさせないほど、とても面白くて、楽しくて。
真っ青で、柔らかく雲を浮かべている空だけが、私たちを見下ろしていた。
その柔らかさが、私にも伝染したかのように。
気が付けば、くすくすと、笑っていた。
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