ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第5章 存在意義

第5話

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「大丈夫ですよ」

「何がだ?」

「かわいこちゃん、降って来ますから。きっと」


そう言えば、白い歯を見せて、にかっと大きな笑みをこぼす左之さん。
その笑みが、やっぱりとても綺麗だと思ってしまう。

そう、彼は、町娘と結婚する。
たしか、その名は――――まさ。

左之さんの、この大きな笑みに彼女も魅せられるのだろうか。


「おう! そうだよな、この左之様をほっておく女なんていねぇからな。ってぇことで、璃桜、俺なんてどうだ?」


………色気たっぷりのいい男、左之さんの欠点は、これだけだから。


「そうですね、ぜひいつかお願いします。そう言えば」


暑苦しい方向に持ってかれそうだったから、左之さんの言葉はサラリと流して、話題を変える。
私も人のこと言えないくらい流すの上手いかも。


「どうして、三人で此処に来てくれたんですか?」


永倉さんとかも一緒に居そうなのに、この三人が来てくれたことが不思議だった。


「平助と総司が、璃桜のこと心配しすぎてここまで見に来たからに決まってんだろ! 俺は、それを見つけて便乗したんだ」

「え」


私のことを、心配に思う?どうして?


「いやいやいやいや、違うって。左之さんだって璃桜がどうなってるのか気にしてましたよね?」

「そうだよ!」

「いやぁ、平助と総司の心配具合には負けるね」


続きそうな言い合いを遮って、訊く。


「ちょ、あの、………どうして?」


私、別に心配されるようなことしてないよね?

きょとんと首を傾げて三人を見れば、何故だか彼らも同じように此方を見ていた。
何か変なことでも言ったのだろうか。

そう思っていれば、そうちゃんがため息交じりに口を開く。


「璃桜、怪我してないかなぁと思って」

「怪我?」

「うん。俺、強い人と手合せになると止まらなくなっちゃうから。怪我させてたら如何しようって思って」


―――――不安に、なった。


その言葉にはっと目を見張れば、そうちゃんの申し訳なさそうな、伏せられた瞳が見えた。


「大丈夫。怪我なんて全然してないって言ったじゃない」


稽古場での返答と同じことを言えば、瞳を長い睫に伏せたまま、そうちゃんは言葉を紡ぐ。


「そうなんだけどさ、気になって。璃桜、隊士に成りたがってたし、この結果に落ち込んでるかなって」


その言葉に、驚いた。

私のことなど、彼にはやっぱりお見通しらしい。
落ち込んでいる原因は違ったけれど、落ち込んでいることは予想されてしまったみたい。



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