ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第4章 試験

第24話

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「………おめぇ、そんなこと言っても何もでねぇぞ、小姓のままだぜ」

「だから、私は小姓でいいんですってば。そもそも見返りなんて、期待してませんて」

「……気色わりぃ」

「失礼な」


無意識でも一応敬語だったが、芹沢さんの前なのも忘れて、部屋にいるように二人で話し続ける。


「そうかそうか、俺の小姓がそんなに嬉しいのか」

「誰がそんなこと言いました?」

「今てめぇで言ったじゃねぇか、その口でよ」

「それとこれとは話が別です!」

「………わっはっはっはっは!!!」


言い合いのようになってきたところに、いきなり大きな笑い声が響く。

驚いて声の主を見れば、にやりと笑って此方を見ていた。


「芹沢きょく、ちょ、」


如何したのかと思い尋ねようとすれば、遮るように口に出した。


「……お主、やりおるな。土方と此処までやらかすのは、沖田以外見たことがないぞ」


さぞ面白そうに笑う芹沢さんに、何故か恥ずかしくなる。

上手い言葉が見つからなくて、ただ黙ってふにゃり、と笑って見せれば、納得したように頷かれた。


「お主は、璃桜だったな」

「はい、そうです」


突然名を確認されて、曖昧に頷いていれば、ぐい、と横から袖を引かれ、腕を掴まれた。

その腕から目を上げていけば、引っ張ったのは、言わずもがな。


「璃桜と私はこの後、膨大な仕事があるのでここら辺で失礼します。行くぞ、璃桜」


歳三によって引かれた腕につられ、芹沢の部屋を強制退出させられた。

襖が閉まる瞬間、最後に見た彼の瞳は。


―――――璃桜、気に入った。
そう、伝えたいかのように細められていて。


その瞳の、澄んだ色にはっとする。

先ほどまでの濁りなど、全く感じさせないほど生き生きとした双眸だった。



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