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第4章 試験
第24話
しおりを挟む「璃桜、と言ったな。お主は、隊士にはなりたくないのか」
「え、…と」
本音を言えば、小姓ではない方が良い。
けれど、それを言うことはできない。
そう思い、そっと歳三を見上げれば、じっと此方を見下ろす漆黒の双眸と視線が交わって。
如何してだか分らないけれど、ふっと歳三が微かに笑みを零したような気がした。
………………自分の言葉で、話しゃあいい。
そう、言ってくれたような気がしたから。
「芹沢局長、お気遣いありがとうございます。けれど、私は…とし、…土方副長の小姓がいいので」
濁った瞳をしっかり見据えて、言葉を紡ぐ。
「ほう。それは本音か?」
「……はい」
「何故、そう思う?」
「え、」
まさか、そういう方向に聞いてくるとは思わなかった。
言葉に詰まった私を見て、芹沢さんはにやりと口角を上げる。
何故?
そこで、ふと思う。
私、如何して小姓で良いと思ったんだっけ。
数十分前に、記憶を巻き戻す。
………そうだ。
「………副長に、決められたから」
あの手合せの結果からみたら、この決定は多少なりとも理不尽ではあると思うけれど、
副長、土方歳三――――彼の選択だから、私は納得したんだ。
ぽつりと漏らした言葉に、二人は驚きで目を見張る。
「何だと?」
「……璃桜? おめぇ、何言って」
ぽかんとした二人の言葉に、かぶせるように言う。
「……………土方副長のこと信じてますから」
まぁ、その理由は未来からきて彼の絶妙な人選能力を知っているからなんだけれど。
それがなくても、と想像する。
もともと私がこの時代に居たとして、未来のことなど何もわからなかったとして。
例えそうであったとしても、何故だか歳三のことは信じると思った。
まだ、出逢って一日しかたっていないのに、如何して此処まで信じられるのか、自分でもわからない。
根拠も何もない、ただただ直感的な想いだけれど、ひどく心が己に訴えてきたから。
自分の気持ちを、信じようと思う。
これが、私の、“自分の言葉”だから。
きゅ、と着物の合わせ目を掴んで、二人を見ていれば、何処かつんと顔を上げた歳三と目が合う。
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