ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第4章 試験

第21話

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「そんな事、気になるの?」

「…………ああ、少しな」


そう言ってそっぽを向く彼に、少しだけ意地悪したくなった。


「んー、教えてほしい?」

「おめぇなぁ」


文句を言いたげな唇に人差し指を当てて、にやりと笑む。

「歳三がどんな夢見てたのか教えてくれたら、教えてあげてもいいよ」

「………そう言うとこまで総司にそっくりだな、おい。総司に乗っかられてる気になってくる」


………ちっ。

せっかく小悪魔的にほほ笑んでやったっていうのに、歳三は惑わされもしない。

くそう、このプレイボーイめ、次は何て言ってやろうかなんてかなり馬鹿げたことを考えていた時。


「俺がなんですか?」


突然割り込んできた声に、お互いはっと入口に目をやった。

そこには、今の私より、何十倍も悪戯っ子の表情をした総司がいた。

ふぅ、ともう一つため息をついた歳三が、ぼそりと私に言う。


「…………璃桜、その顔のまま隣に並んでみろよ」


その声に、呆けていた状態から抜け出した。


「………って、そうちゃん!! 人の部屋に入るときは声くらいかけるのが常識でしょう?!」

「かけたもーん。土方さん、仕事しないで何してんですか? みんなに言っちゃいますよ?」

………こいつの下着、晒に替えさせてたんだよ」



そう言うなり歳三が、いきなりよっこらしょ、と立ち上がったせいで、必然的に私はぐらりとバランスを崩す。


「あ、あぶな」


倒れると思った時、そうちゃんが肩を支えてくれた。


「大丈夫?」


お礼を言おうと見上げた総司の表情は、必死に笑いを堪えているせいで唇が変な風に歪んでいた。


「あ、ありがと…………何、その顔」

「いや、だって、土方さ、ぶくく」


何がツボになったのか全く分からないけれど、そうちゃんはお腹を抱えて笑い出す。

それを一瞥して、頭をがしがしと掻いたあと、懐手をした歳三は興味なさげに一言。


「……うっせぇよ、総司。おめぇは斉藤と稽古でもしとけ。璃桜、めんどくせぇが芹沢ん達のとこ行くぞ、ついて来い」

「え、あ、はい」


すたすたと長い脚で歩き出した歳三を慌てて追いかけた。


「いってらっしゃーい。…………いやぁ、土方さんが自分の膝にのってる女の人のこと考えられなくなるくらい、慌ててるなんて、……くく」


そんな事を、総司が呟いていたとは知らずに。



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