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第4章 試験
第20話
しおりを挟む「……終わった」
けれど、歳三は微動だにしなかった。
「……歳三?」
不思議に思って歳三の前に回り込めば、長い睫を伏せて頬杖をついていた。
すぅすぅと気持ちよさそうな寝息が、歳三から聞こえる。
…………寝てる。
この一瞬で寝るなんて、どんだけ疲れてるの。
とても気持ちよく寝ているようだったから、起こすのもなんだか忍びなくて、少しだけ待とうと思った。
目を瞑って黙っていれば、絶世の美男。
さらりと一すじ流れた黒髪が、すぅと通った鼻筋にかかって、艶やかな唇に触れている。そっとその髪を手に取り、脇に避けようとした。
瞬間。
「…………璃桜」
低く艶やかな声に、名を、呼ばれた。
起きたのかと、吃驚して手を静止させた私に、歳三はぽつりと言葉を落とす。
「……………お前は、いつになったら此処に戻ってくんだよ」
その言葉に、どくりと心が鳴る。
どういう、こと?
まるで、私が前から此処にいたような、そんな言い草。
「………歳三、」
真意を尋ねてみようと、そっとその顔を覗き込んだ時。
ぱちり。
眠りについていたはずの、漆黒の瞳が私を見つめる。
暫しの、沈黙。
「…………おい、お前、何してやがる」
歳三の言葉にふと我に返れば、私は胡坐をかいていた歳三の膝にのっており。
まるで歳三を襲おうとしてかのような恰好になっていた。
「………………何も?」
「………嘘つけ」
「本当だってば!!」
慌てて歳三の膝からどこうとすれば、ぐいと腕を掴まれる。
じっとその双眸に目を見つめられて、何も悪いことはしていないはずなのに、こちらが何かしたかのような錯覚に陥った。
「おい」
「は、はいぃ」
「………俺、何か言ってたか?」
聞かれた問いに、キョトンと首を傾げる。
寝言で、いった事。
――――璃桜。
―――――私の、名。
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