ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第4章 試験

第18話

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「おめぇ、もう少し男らしくしろよ、総司と手合せしていた時の迫力はどこいっちまったんだ」

「は?」


その美麗な男から吐かれた言葉に、瞬時に現実世界に引き戻された。


「総司の出してた殺気の方が強かったぜ、芹沢のやつより」


なのになんで腰抜かしてんだよ、とそう言いたいらしい。


「いや無理でしょ、私19年間女やってきたんだから」


そんなの出来たらとっくにやっている。


「じゃあ練習しろよ」

「はぁ? 駄目駄目、どこでするっていうの」


何処をどうとったらそう言う発想になるのだろうか。

流石、のちの新撰組の鬼副長は、考えてくれることが他の人とは違って飛躍している。
唖然として無理、を繰り返す私の腕をつかんできた。


「そうと決まったら部屋だな、よし部屋で練習だ」

「何でそうなるの………」

「ああ? 理由が聞きたいか? 俺の部屋ならおめぇと総司くらいしか勝手に開ける奴はいねぇからだよ」

「……………そうでしたか」


やばい、これじゃ何も反論できない。
観念したかのように力を抜けば、ひょいと肩に担がれて部屋に連行された。

……ここぞとばかりに全体重をかけてやったのは、私だけの秘密だ。


「ぶっ」


襖を開いた瞬間、敷きっぱなしだった布団の上にぽーんとうっちゃられる。

枕に顔面をぶつけられて、鼻がさらに低くなった気がした。

いつか仕返ししてやろうと心に決めれば、顔にダダ漏れだったのか歳三が不満げに言う。


「……おめぇ、重いんだよ。自分で歩きやがれ」

「乙女を捕まえて重いは無いでしょう」

「髪も自分で結えねぇで、何処が乙女だこの餓鬼」


ごもっともな副長様のご意見に、べーっと舌を出して見せた。


「………そう言うとこが餓鬼ってんだよ……」


呟かれた声が小さすぎて何言ってんだかわかりゃしない。


「何か?」

「………なんでもねぇ。兎に角、おめぇ、まずはそのわけわからねぇ胸当てを外せ」


………はい?
胸当て………ブラのこと?

思い当れば、羞恥に顔が真っ赤になった。


ブラを外せと?
19歳の女性に?


「な、何でよ。男らしくなるために練習するんじゃなかったの」

「そんなもん着けてて、見えたらどうすんだよ。疑われるぞ。そのまま芹沢のとこ行ったら、一瞬で襲われるぜ」


そう言ってため息を一つ。



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