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第4章 試験
第13話
しおりを挟む木刀を斜めに構える姿はまるで、元々この時代の人だったかのように馴染んでいて。
目の前で相対しているのが“総司”なんだと、強く思った。
その刹那、ふっとその琥珀が眇められ。
ダンッ!!
――――――お互いの足が、床を蹴り上げた。
トップスピードにのって、木刀を振り下ろす。
総司の切っ先が、己に迫ってくるのを視界には捉えられずに、感覚で悟る。
どちらが、速いか。
竹刀にぶつかるか、あるいは―――――――――
「そこまでだ」
「わっぷ」
声と同時に、目の前が濃紺に染まる。
何が起きたのか理解できずに、顔を上げればサラリと艶やかな黒髪が目に映った。
そのままゆるゆると視線を上げていけば、自分の頭の上に端整な横顔があった。
「総司、やり過ぎだ」
頭の上で落とされた歳三のその言葉に、はっと我に返る。
それに伴って、周りの景色が漸く戻ってきた。
何時でも無表情な斉藤さんと、始めから変わらず心配そうな表情をした山南さん以外が、全員唖然として此方を見ていた。
相対する人に関連することしか感じられなくなるほどまでに、今の手合せに集中していたんだと思った。
何が起きたのか知りたくて、自分の今の状況を見下ろしてみる。
歳三の左手によって右手の木刀を掴まれて、その切っ先は総司の木刀を受け止め、竹刀は左腕ごと歳三の右手にすっぽりと抱え込まれていた。
少し見方を変えれば、つまるところは、抱きしめられていて。
その事実に若干恥ずかしくなって、顔を逸らす。
その先に、しょんぼりと肩を落とすそうちゃんがいた。
「ごめんなさい…………」
「総司、なに本気だしてんだ、いつもはぜんぜん本気ださねぇ癖によ」
「璃桜が強いから………つい」
「つい、じゃねぇだろ、怪我してたら如何するつもりだったんだ? ああ?」
歳三の強めの言及に、薄い肩をさらにちぢこませるそうちゃん。
その表情は、全くと言っていいほどさっきまでとは違うものだった。
「ごめんね、璃桜。俺、集中すると周りが全然見えなくなるから」
………心の何処かで、いつものそうちゃんだと思ってほっとする自分がいた。
「大丈夫、歳三が止めてくれたから、全然怪我なんてしてないよ」
「よかった……璃桜を怪我させてたら、俺生きていけない」
「そうちゃん、大げさ」
はぁぁ、と大きなため息をついて、そうちゃんがその場にしゃがみ込んだのを皮切りにして、わらわらと人が集まってきた。
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