ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第4章 試験

第10話

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「俺はいらないかな、璃桜はどうする?」

「うーん」


そうちゃんよりも劣るとはいっても、平ちゃんも北辰一刀流の幕末の剣士だ。

防具をつけないと危険なのは重々承知。
けれど、防具の重さは、私の長所でもある速さを押さえてしまう。

動きを遮られるならば、逆にデメリットになるから。


「……いらない、です」


ぽつり と落とした言葉に、わっと新八さんと左之さんが反応した。


「あ? 璃桜、大丈夫かよ」

「平助、気を付けろよ、怪我させんなよ」

「まかせろい!」


平ちゃんの活気にあふれた返事を耳に、眉をおろして苦笑する、心配顔の山南さんから竹刀を受け取る。

周りの人に見守られつつ、お互いに広い所に進み出て、向かい合う。


…………ああ、藤堂平助と手合せする日が来るなんて。
その事実に、今更ながらどきどきと高鳴り始める胸に手を当てて、落ち着こうとした時。


「あ、璃桜、そーいえば」


今から竹刀を交えるであろう平ちゃんから、普通になんの緊張感もなく名を呼ばれた。
緊張しているのは、私だけってことか。

そんな事を思いながら、平常を装って聞き返す。


「何、平ちゃん」

「璃桜は、流派は無いのか?」

「私?」


流派、ねぇ。

一応、平成では沖田総司にあこがれていたから、天然理心流の道場に入門していた。
その沖田総司がそうちゃんだったなんて、変な縁もあるものだ。

けれど住んでいた場所が、なんせ京都なものだから、長期休暇の時しか稽古には参加できなかった。
あとは、いろいろな近場の道場や剣道教室、高校の部活などを巡り歩いていた。

もう一つ理由があるのだけれど、まぁ、流派は、結局言わば。


「…………我流?」

「なんだそれ、わけわかんねぇよ」

「あー、特に無いよってこと」

「璃桜」


平ちゃんとゆるゆると会話を続けていれば、何時の間にやらそうちゃんが2本の木刀を持って傍に来ていた。


「何?」

「俺と、やろう」

「………は?」

「平助、代わって」


真剣みを帯びた声色に、平助がすぐに場所を空けて。


「近藤先生。璃桜と、手合せすること、許してください」

「ああ、構わないよ。総司がやりたいのなら、別にいいさ。なぁ、歳」

「…………いんじゃねぇの」


上司の許可も、でた。

状況についていけていないのは、すでに木刀を手渡された私だけのようで。


「え、何で?」



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