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第4章 試験
第4話
しおりを挟む「あれ……」
入った広間の風景。
昨日の夜は、近藤さんの掛け声で食べ始めたのに、今日はバラバラで各々が朝餉をとっていた。
てっきり朝もみんなで食べるものだと思っていたから、仲の良い人同士、皆で輪になってとる朝餉の夜とは違った様子に、小学生みたいにわくわくした。
「……ふっ」
感情が出てたのだろうか、私の顔を見て歳三が笑う。
「おま、ほんと、わかりやす」
「顔にダダ漏れで悪かったわね」
どうせ餓鬼ですから。
そう言って剥れて見せれば、やおら歳三の表情が柔らかい物に変わる。
「………いんじゃねぇの。能面よか、笑ってた方がマシだ」
「…………っ」
その眼差しの優しさに。
その言葉の暖かさに。
何故だか、心が、酷く高鳴った。
同時に、妙な既視感に襲われる。
記憶の何処かが、この笑みを、この眼差しを知っていると、私に訴えて。
「……璃桜?」
「何でも、無いよ」
歳三のことを、知ってるなんて、そんな筈は無いのに。
「ほら、早く来いよ。璃桜」
「うん」
低く艶やかな声で、私の名を呼ぶ貴方を、ずっと昔に見たことがある。
その既視感が、ご飯を口に運び始めてからも付きまとって、中々離れてくれなかった。
幕末に来て、初めての朝ごはん。
メニューは、白米にお味噌汁、青菜のお浸し。
皆でワイワイと食す朝餉は、とても美味しかった。
そこで、ふと気づく。
「そう言えば、源さんが料理してくれているんですか?」
直ぐ後に合流するように、お膳を持って輪の中に入ってきた源さんに問うた。
「ああ、そうだよ。他の人たちは、当番制で私を手伝うことになってるんだ」
「じゃあ、私も手伝う日が来るんですね!」
「そうだね。おっと、その喜びよう、璃桜さんは、料理好きなのかい?」
言わずもがな、料理は得意分野だ。
お菓子作りも好きだけれど、1人になってからずっと自炊してきたから、ある程度のものは作れる。
「はい、得意な方だと思います」
「それは心強い。なんせ、こんな集団だろう? 料理を任せたら、恐ろしいことになるんだよ」
その言葉に、周りの面子を見渡して、それぞれが勝手場に立っている所をイメージした。
「…………確かに」
想像できる。
歳三と平ちゃんは、器用そうだけど。
左之さん、新八さん、そうちゃんなんて、包丁持たせたら恐ろしいことになりそう。
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