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第4章 試験
第2話
しおりを挟む「何が乙女だ。涎垂らしてぐうぐう寝てたくせによ」
「え、嘘」
慌てて口元を確認するが、涎を垂らしていた形跡などどこにもなく。
騙された、と思って歳三を見れば。
「冗談だ。……その桃色のもの、何だ?」
案の定、にやりと笑って此方を見ていた。
「どこ見てんの! 変態!!」
下着をばっちり見られていたことで、さらなる羞恥が自身を包み、真っ赤な顔になっていくのが自分でもわかった。
「これだから、餓鬼だってんだよ。おい、さっさと着替えろ。飯だ」
声と共にばさり、と萌葱色の衣を投げられる。
開いてみれば、私に丁度よさそうな大きさだった。
「それ、俺の昔のだから。ちょっと小さいから、璃桜にあげる」
「あ、ありがとう、そうちゃん」
「袴は、それ穿いてて。後で、一式揃えに行こう」
「うん」
にっこりと笑いかけてくれたそうちゃんの頭に、後光が差して見えた。
……勿論、歳三の背中には、黒い羽が見えた。
二人が部屋から出て行って、いそいそと着替えた。
髪は洗えてなかったから、括ってお団子にした。
そう言えば、お風呂ってどうすればいいんだろう。
「まだー?」
「あ、いいよ! 今行く!」
聞いてみようと思いながら、そうちゃんの襖越しの声に返事をして、部屋から外に出た。
外に出た瞬間、ぴしり、と固まる二人。
その二人を目にして、疑問なんて吹っ飛んだ。
「え…、何か、変だった…?」
自分の着付けに、可笑しい所でもあったのだろうか。
そう思って尋ねれば、何故か顔を赤くした歳三が、溜息を零しながら言った。
「璃桜、なんつー髪型してんだよ」
「え? お団子だけど……」
もしや、この時代では可笑しいとか。
「へ、変……?」
「いや、別に変じゃないけど」
「変だ。その丸まってるの下ろせ」
そうちゃんの言葉にかぶせるように、オブラートも何もなくずばりと言い切った歳三。
勿論、可愛いだなんて言葉期待してるわけじゃないけれど、何故だか少しだけ胸が痛んだ。
何できゅうとか鳴ってるの、小さい癖に。
そう思って、ふと気が付いた。
……可愛いって、言われたいの、私?
思った途端、そんな自分に、何考えてるのと反論したくなった。
けれど、お団子を手で崩しながら、ふんと鼻で笑う歳三のことを眺めれば、無意識のうちに心にどろどろとしたものが沈着して。
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