ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第4章 試験

第1話

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さぁっと、清々しいが冷たい風が私を掠める。

その風から逃れるように、布団の中の安全地帯へ夢うつつながら潜り込む。

……今日は、何も予定無かったから、寝よう。
二度寝って、すんごく幸せ。

そんな事を考えて、束の間の幸せに浸っていた璃桜に、災難が訪れた。


「おい」

「……ぅん、」

「おい。起きろ」

「……うう、」


げしげしと足蹴にされる私。


「土方さんー、もっと優しく起こしてくださいよ」

「うっせんだよ、総司」


騒々しく交わされる会話に、眉を顰めて反論した。


「あと、5分………、」

「あ? 起きろっつってんだろう、璃桜!」


イラついている声と共に、潜り込んでいた布団が奪われる。


「んー、五月蝿いなぁ……」


差し込んでくる光の眩しさと、布団を剥がされた肌寒さに、若干不機嫌になって目を開ければ、そこには、私よりもっと不機嫌そうに、眉間に皺を寄せた歳三が仁王立ちしていた。

後ろには、ゆらゆらと手を振る総司も立っていた。


「え、」


そうちゃん。
その姿を目に捉えれば、一気に自分に起こったことを思い出す。


私、幕末に来たんだった……。

あれ、私ふつうに受け止めすぎかな?
物語の中では、もっとこう、葛藤する感じになるのに。


腕を上にあげて伸びながら、そんなことをぼんやりと考えていれば、低く張りのある声と柔らかい声が降ってきた。


「よぅ、やっと目ぇ覚めたのか」

「お早う、璃桜」

「あ、おはよう、歳三、そうちゃん」


挨拶をして、むくりと起き上がれば、なぜだか顔を染めるそうちゃん。


「はー、平助来させなくてほんとによかった」

「確かに、彼奴が来たらこの状況、鼻血でもぶっ放してんじゃねぇか」

「言えてるー、てゆーか、土方さんだって危ないでしょ?」

「は? 誰が餓鬼に発情するんだよ」

「何が」


状況がつかめず、尋ねれば、歳三がため息をついて言った。


「……思いっきり肌蹴てんぞ」

「……うそ、」


その言葉に自身の姿を見下ろせば、あられもなく肌蹴た胸元は若干薄桃色のブラが見えている。

そのうえ、太ももを晒すほど、裾が割れていた。


え、なにこのセクシーな恰好。

初めての和装での就寝で、起きたらこんなことになるのかと呆けていれば、


「……扇情的だね?」


そうちゃんの声がして、はっと我に返り歳三の手から布団を奪い返し、身体にまきつけた。


「ななななに見てるの!! 乙女の寝姿見ないでよ!!」


人生で初のセクシーな姿を大の男二人に見られたなんて、幸先悪い。

羞恥に顔を染めていれば、はん、と鼻で笑われた。



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