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第3章 ひとびと
第9話
しおりを挟む「平ちゃん……?」
「ヘイスケクン、ドウイウイミカナ?」
またしても総司から剣呑なオーラが発せられる。
そうちゃん、片言になってるよ………。
それに気づいた平助は、慌てたように、取り繕った。
「あ、えええええと、璃桜は総司の双子だから、おんなじように強いのかな、と思って。はやく手合せしたいな~」
そう言うことか。その好きだったのね。
「いやいやいや、それなら俺がやってあげるから。うん、次の人自己紹介してください」
なんだかそうちゃん、私が女だってことをばれない様にするためじゃないような言い草。
まるで、平助から離そうとするような。
少しだけむっとした私は、総司を遮って、平助に言葉をかけた。
「平ちゃん、明日にでも手合せしよう?」
「え、あ、うん」
なんとなく不完全燃焼の顔で黙り込む平助に、誰かがぼそりと呟いた。
「…………可哀想にな」
え、どういうこと。そう思って声のした方に顔を向ければ、
あの無表情な瞳が此方を見ていた。
「……斉藤一」
やっぱり斉藤さんだった。
なんでだろう、周りの空気が斉藤さんだけ違う。
凛と澄んだ空気をまとった彼は、ただ何事にも興味を持っていないようでいて、どこかに何かを隠しているような。
不思議な、違和感を持った人だった。
名前だけを言って、もう興味がなさそうに目線を外した彼に、大らかな人が声をかけた。
「一君、もう少し何か話したら」
「特に、無い」
「そうか、なら、私の番だね。井上源三郎、試衛館時代から近藤さんにはお世話になっているよ。源さんって呼んでくれ。皆にそう呼ばれているからね」
そういえば、史実にもあった。源さん、と親しまれていたと。
大らかにそう言って笑った彼は、どこか近藤さんに似ていて、安心できるようなそんな暖かさを持った人だった。
「一つ聞きたいんだが、いいかい?」
「あ、はい。なんですか?」
「璃桜君は、料理、出来るかい?」
なんだ、そんなこと。少し身構えていた私は、ほっと安堵した。
祖父母が死んでしまってから、1人で生きてきたんだから、それくらい日常の一部だ。
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