ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第3章 ひとびと

第7話

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総司と平助に連れられて、一つの部屋の前に着いた。


「近藤さんの部屋だよ」


総司がそう言って、がら、と襖を開ければ、おそらく浪士組の上層部だろう、見知った顔に加えて知らない顔の人も勢ぞろいしていた。


「総司、遅いぞ」

「すみませーん。璃桜、おいで」


総司に招かれて、ちょこん、と腰をおろし周りを見渡す。

ふと、その人数に疑問を覚え、脳みその引き出しから知識を引っ張り出す。


確か、この時期は、まだあまり隊士がいなくて、三つの派閥に分かれていたはず。

試衛館時代からの仲間である近藤派―――近藤勇、土方歳三、沖田総司、井上源三郎、山南敬助、永倉新八、原田左之助、藤堂平助、そして以前より試衛館に出入りしていたとされ、京都にて浪士隊に参加した斎藤一―――の九人。


それに加えて、芹沢鴨率いる水戸派―――芹沢鴨、新見錦、平山五郎、平間重助、野口健司、斎藤と同じく京都で浪士隊に参加した佐伯又三郎―――の六人、

そして殿内派と呼ばれる殿内義雄、家里次郎、遠藤丈庵、神代仁之助、根岸友山、鈴木長蔵、清水五一の七名。


………思い出してみたら、ため息が零れるほどはっきりとすべてを覚えている自分に、嫌気がさした。
タイムスリップ系の話って、全部記憶が曖昧になることが多いのに、実際はならないようで。


ふぅ、と息を零した私に、不信感を覚えたのか歳三が睨んできた。

私、何も悪いことしてません。
そう思ってぎん、と睨み返せば、刹那ぱっと目を逸らされた。


背けた顔の、微かに見える頬は、何故だか朱に染まっていて。

…………何で、赤くなってんの。
その朱色に、懐かしさを覚えた自分に、どこか色濃く掴みどころのなさを感じた。


一瞬胸をよぎった切ない想いに、ぶんぶんと首を振る。
そんな風に思った理由を自分なりに付けないといけない気がして、こちらまで恥ずかしくなって、自分が分からなくなった事にした。


「それでは、改めまして、壬生浪士組の紹介だ。といっても、歳の意向で、試衛館のころから一緒にいる人たちしかいないんだがね」


そうだ、それだ。
近藤さんの言葉に、歳三のせいで若干忘れかけていた疑問を掴みなおした。


近藤さんの言葉に、ここには9人しかいなかったから、なんとなく違和感があったんだと気付く。

本当に壬生浪士組を紹介する気なら、水戸派の人も殿内派の人も呼ぶはずだから。
歳三は何を考えているんだろう。



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