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第3章 ひとびと
第4話
しおりを挟む「そうかー、いやいや、総司にそっくりな双子の弟がいたとはな。知らなんだ」
「そうなんですよー、実は俺、兄貴だったんです」
にこにこと相槌をうつ総司に、本当に近藤さんが好きなんだな、と感じた。
「剣の腕前も似ているのかな?ううん、そこは稽古次第か」
自問自答し、大きく頷いて、
「私は、近藤勇。新撰組局長だ。璃桜くん、ここを家だと思って、励んでくれたまえ」
私に向かって大らかに、笑った。
その笑みはどこか、死んでしまった父に似ているものがあって、きっと総司も、この笑みに惹かれたからその人間性を慕っているのではないかと思う。
………それにしても、近藤さんは、四角い。
膳に手を付けてもぐもぐと幸せそうにご飯を食べる様子を見て、口も顔も、背中も、どこをとっても、大らかな性格とは違って四角いひとだな、なんて馬鹿なことを感じた。
目も輪郭も丸く、若干猫背なところもある総司とは大違いだ。ということは、私は総司にそっくりなわけだから、私とも似てないってことか。
ご飯を食べながらじっと観察していれば、漸く現世に戻ってきたのか、歳三が近藤さんに話しかけていた。
「あー、近藤さん、あとでちょっと幹部だけを呼んで話してぇんだが、いいか?」
「いいぞ、璃桜君のことだな?」
「あー、そうっちゃそうだ。おい、総司、好き嫌いするな」
歳三のその声に総司に目を移せば、ぽんぽんと、歳三の膳に野菜が移されていくところが見えた。
「えー、でも人参おいしくないですもん。はい土方さんにあげます」
「止めろ、それはあれか、俺に対する新手の虐めか?」
「えー、土方さんの栄養を考えてるんですよ」
何時ものことなのか、あまり抵抗もせず自身の膳を見る歳三。
漸く移動し終わったのか、箸を止めて、満足げに食べ始める総司の膳をのぞき見たら、野菜が全然残っていなかった。
それを見た途端に思い出すのは、労咳のこと。
病気について専門的なことなど何もわからないけれど、野菜を残すのはあまり体にはよくないだろう。
食べないよりは体のためになるだろうと、食べさせるため声をかけた。
「そうちゃん」
「ん?何?」
きょとんとする双子の兄に、命令口調で言う。
「野菜残さず食べなさい」
「えー。不味いからやだ」
「食べなさい。体にいいから」
「美味しくないもん。甘い野菜にしてよ」
幾らそんなこと言われたって、めげないよ。貴方のためだから。
「……総司。食べなさい。怒るよ」
「………うう、」
じっと見つめていれば、総司はしょんぼりと肩を落として、一口だけ人参を齧った。
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