ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第3章 ひとびと

第3話

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……一くん。と言うことは、この、無感情の無表情のすべてが無に見える方が斉藤一だろうか。

確か、沖田総司と斉藤一、藤堂平助は同い年だったと、記憶を探る。
ぜんぜん、同じ年に見えない。落ち着ききっていて、眼差しの静かさは、総司なんかとは雲泥の差があった。


「………」


無言のままじっと見つめられて、何か自分が悪いことをしている気になる。

いや、実際騙しているんだけれど。
なんだかとても居心地が悪くって、ぽん、と背を叩いてきた総司を理由に、そっと無感情な視線から逃れた。


……不自然ではなかっただろうか。
斉藤さんは、史実でも鋭い人、という風に言われているから、侮れない。

そんなことを考えながらも、一応自己紹介をした。


「………一応、隊士になる予定です。どうぞよろしくお願いします」


…………歳三の小姓になるかもしれないけど。
それは言わずに、にこりと笑って頭を下げた。


「じゃあ紹介も終わったことだし、近藤先生、お願いします」


総司の声を受けて、やっぱり大きな口の人がいただきます、と挨拶をした。

途端に隊士たちの話し声に一気に騒がしくなる部屋に、なんだか修学旅行を思い出した。
私は何処に座ってご飯を食べればいいのだろう。

というか、私もご飯を貰えるのだろうか。
首を回して、周りを見た。


「平助の魚もらいっ!」

「ああ!左之さん!! 何で俺のとるんだよ!」

「平助はチビだからな。俺は飯がたんねぇんだよ」

「俺は成長期だ―――!!」

「もう19じゃねぇか、そろそろ止まるぜ」


傍で聞こえた喧騒に、顔を向ければ、平ちゃんと左之さんがご飯の取り合いをして、新八さんが野次っていた。

あ、やっぱり、これも実際に有ったことなんだ。

……これを実際に見る日が来るとは思わなかった。もしも帰れたなら、ゼミのみんなに自慢しようと、ふとそんなことを思う。


三馬鹿の実際のじゃれ合いに、感動するまもなく、総司に呼ばれた。


「璃桜!こっちおいで」


隣に行けば、私の分も総司がご飯を用意してくれていたようで、ちゃんとおいてあった。


「璃桜は俺の隣だからね」





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